【ASH速報】WARFASA ワルファリン療法後のアスピリン投与でVTEの再発40%低下
公開日時 2011/12/14 06:01
静脈血栓塞栓症(VTE)の二次予防で、ビタミンK拮抗薬(VKA)療法後にアスピリンを投与した結果、再発リスクを有意に40%以上低下させることが、二重盲プラセボ対照無作為化臨床試験「WARFASA」の結果、明らかになった。イタリア、Perugia大のCecilia Becattini氏が、米サンディエゴで開催中の第53回米国血液学会(ASH)年次学会のオーラルセッションで、12日発表した。
VTEでは、再発予防にワルファリンをはじめとしたVKAが処方されているが、出血リスクや用量管理の難しさなどから、数カ月で中止されることがある。しかし、治療を中止してから約20%の患者が、2年間のうちに再発するとされており、より適切な治療戦略が求められている。
一方、アスピリンはこれまでの研究で、VTEの発症予防や症状緩和との関連性が示唆されていることから、研究グループは、アスピリンがVKA療法後の非誘発性VTE患者の再発に対して、有効的であるかどうかを検討した。
症候性の非誘発性深部静脈血栓症(DVT)か、または肺血栓塞栓症(PE)が確認された患者で、未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリンによる初期治療を受けた後、VKA療法(INR 2.0 – 3.0)を6~18カ月実施した患者403例を、①アスピリン(100 mg、OD)群205例②プラセボ群198例――に無作為に割り付け、2年間治療した。試験期間(中央値)は24.6カ月、治療期間(中央値)は23.8カ月だった。
主要評価項目は、有効性評価項目として試験期間中の症候性VTE(DVTまたは致死的、非致死的PE)の再発に設定し、安全性評価項目には大出血または臨床的に意義のある非大出血を据えた。
被験者の特性は、年齢がアスピリン群61.9歳、プラセボ群62.1歳、男性それぞれ65.8%、61.9%、DVTそれぞれ59.5%、66.0%など。またVKA療法期間は12カ月間が最も多く、それぞれ54.1%、56.8%で、18ヶ月間受けていたのはそれぞれ8.8%、11.7%だった。
◎アスピリン投与で出血リスク増加みられず
試験期間中のVTE再発は、アスピリン群で6.6%患者/年(28例)、プラセボ群では11.2%患者/年(43例)で、アスピリン群で有意に発生率が低いことが示された(ハザード比 0.58、95% CI: 0.36 - 0.93、p=0.02)。
治療期間中の再発は、アスピリン群で5.9%患者/年(23例)、プラセボ群で11.0%患者/年(39例)で、こちらもアスピリン群が有意に低かった(ハザード比 0.55、95% CI: 0.33 - 0.92、p=0.02)。
アスピリン以外でVTE再発と有意に関連していた因子には、高齢者(65歳以上、HR: 2.26、95% CI: 1.26 – 4.41、p=0.017)、男性(HR: 2.02、95% CI: 1.16 – 3.49、p=0.012)が浮かび上がってきた。これらの調整リスクを加味したアスピリンの調整ハザード比は0.53(95% CI: 0.32 – 0.85、p=0.009)だった。
出血リスクは両群とも、大出血が1例(いずれも0.3%患者/年)、臨床的に意義のある非大出血が3例の計4例で(HR:0.98、95% CI: 0.24 – 3.96)、死亡例はアスピリン群6例(1.4%患者/年、プラセボ群5例(1.3%患者/年)で、出血リスクの増加はみられなかった。
同結果を受けてBecattini氏は、「アスピリンは大出血リスクを顕著に増加させることなく、VTEの再発リスクを約40%低下できる」とし、安全性や実用性、コストの面から考えて、「VTEの長期治療において経口抗凝固剤に取って代わる有効的な代替薬である」と、結論づけた。