プラザキサカプセル 腎障害を有する高齢者への使用で“適正使用のお願い”
公開日時 2011/06/20 04:03
日本ベーリンガーインゲルハイムは6月17日、抗凝固薬・プラザキサカプセル75mg、110mg(一般名:ダビガトランエテキシラート)の市販後調査中に腎障害を有する高齢の患者において、重篤な出血性の副作用が報告されたことを受け、「適正使用のお願い」を発行した。投与患者を含めた同剤の適正使用を促すのが目的で、同日付で医薬品医療機器総合機構(PMDA)のHP上に掲載された。
同剤は、「非弁膜性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を適応に持つ。投与対象となる心房細動患者は、一般的に腎機能が低下する高齢者が大半を占める。一方で、同剤は85%が尿中に排泄される腎排泄型の薬剤であることから、腎機能低下例では、投与に際し、注意を払うことが求められていた。
適正使用のお願い”では、▽使用前に必ず患者の腎機能を確認する▽透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者は、禁忌のため投与しない――ことを求めた。中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30~50mL/min)のある患者や、高齢者では、110mg1日2回投与を考慮し、投与する際には慎重投与を求めた。特に高齢者では出血の危険性が高いことも注意喚起した。
◎重篤な副作用 ワルファリンからの切り替え症例で多く 患者状態の十分な観察を
重篤な副作用が報告された症例では、「ワルファリンから本剤への切り替え症例が多く認められている」とした上で、ワルファリンからの切り替えの際には患者の状態等を十分観察し、慎重に投与することを求めた。
特に重篤な出血性の副作用は、投与開始早期(約1週間以内)に多いため、この間は特に注意を求めている。
一方、患者に対しては出血が続くなどの症状がみられた場合に、直ちに主治医に連絡するよう指導することも求めた。
症例報告としては、3例が挙げられ、死亡が1例、軽快が1例、未回復が1例となっている。
死亡例は、80歳代女性で、ワルファリンカリウムから切り替えを行い、1日220mg/日を投与。投与開始から12日目で血痰、鼻出血を認め、15日目(投与中止日)に血痰、呼吸困難を認め、救急外来に搬送され、翌日に死亡している。副作用名は、肺胞出血、呼吸不全、鼻出血、喀血、貧血、血尿、メレナ。臨床検査値は、Cr(正常値:0.4~1.0mg/dL)が投与開始50日前に2.21mg/dL、投与中止日は4.2mg/dL。BUN(8.0~20.0mg/dL)は、投与中止日に53.8mg/dL。
このほかの症例のうち、80歳代女性は、220mg/日・3日間投与で、胃腸出血、腹部不快感を認めたが、投与中止21日後に軽快した。もう1例の80歳代男性は300mg/日・5日間投与で脳出血をおこし、意識回復を認めていない(未回復)。
いずれの症例も、「添付文書上の禁忌、または使用上の注意に該当する、もしくはそれに近い可能性がある」ために、投与対象を含めた同剤の適正使用を促す目的で発行したとしている。
日本ベーリンガーインゲルハイム広報部は、本誌の取材に対し、「プラザキサは、多くの心房細動患者さんを脳卒中(心原性脳塞栓症)から護り、患者さんのベネフィットとなる有用性の高い薬剤と確信しており、その適正使用の推進に取り組んでいる」とした上で、「今後も引き続き、会社として強力に適正使用に推進して参る所存です」とコメントしている。