NBIのプラザキサ 利便性・有効性・安全性高く 医療経済効果も期待
公開日時 2011/02/15 04:02
日本ベーリンガーインゲルハイムは2月14日、東京都内で経口直接トロンビン阻害薬プラザキサ(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)の承認取得会見を行った。
◎ワルファリンに対する優越性が認められた世界初かつ唯一の新規経口抗凝固薬
国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター長の是恒之宏氏は、心房細動患者での脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制を検討したRE-LY試験の結果から、「ワルファリンに対する優越性が認められた世界初かつ唯一の新規経口抗凝固薬」と紹介した。試験結果については、ダビガトラン150㎎1日2回投与群で心房細動患者の脳卒中および全身性塞栓症の発症をワルファリンに比べて35%有意に低減させたほか、頭蓋内出血の発現率も59%低下させたとした。また、ダビガトラン110㎎1日2回投与群においても、脳卒中および全身性塞栓症の発症をワルファリンと同等に低下させたほか、出血リスクについてもワルファリンに対し、顕著に低下させたとした。
日本心臓病学会などが策定した「心房細動治療(薬物)ガイドライン」では、心原性脳塞栓症の発症リスクを測るツールであるCHADS2スコアによるリスク分類に基づいた治療方針が明記されている。CHADS2スコアは、C(うっ血性心不全:1点)H(高血圧:1点)A(年齢:1点)D(糖尿病:1点)S(脳卒中/TIAの既往:2点)の合計0~6点で評価するもの。現在のところ、2点以上を経口抗凝固薬の投与対象としているが、同剤の安全性の高さから、是恒氏は「1点以上で投与を考慮してもよいのではないか」との見解を示した。一方で、同剤は80%が腎排泄されることなどから、「透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min以下)」の患者では、同剤の投与が禁忌であることから、注意を促した。
◎血液凝固モニターやビタミンK摂取制限は必要なし
東京女子医科大学医学部神経内科学主任教授の内山真一郎氏は、従来のワルファリンで必要とされた「血液凝固モニターやビタミンK摂取制限が必要なくなり、多剤との相互作用をチェックする煩雑さが無くなる」と強調。服薬を拒否する患者や、投薬を控える医師が少なくなり、本来の適応となる心房細動患者に適正な抗凝固療法が行われると見通した。さらに、RE-LY試験の結果から、ワルファリンに比べて脳出血の危険性、特に頭蓋内出血や脳出血の発症リスクを大きく低下する点を強調し、「安全性の高い抗凝固薬として普及が期待される」と述べた。また、現在、神経内科医の専門医のところに患者が集中している現状を指摘。同剤がプライマリケア医まで含めて広く普及することに期待感をみせた。
そのほか、納豆や緑黄色野菜などの食生活の制限が無くなることで、ビタミンK摂取制限による骨粗鬆症にも副次的な効果が期待できるとした。加えて、人口の高齢化で今後増加が予想される心房細動による重症脳梗塞の発症を大幅に減らすこともできるとし、医療経済効果の面にも寄与すると見通した。