受動喫煙原因による死亡 全世界で年間60万人に
公開日時 2011/01/31 03:00
受動喫煙を原因とした全世界の死亡人数は、2004年で推定約60万人に上り、全死亡の1%を占めることが明らかとなった。スウェーデンKarolinska InstituteのMattias Öberg氏らの研究グループが、医学誌「THE LANCET」1月8日号で報告した。
受動喫煙による健康障害に関するエビデンスは、世界の様々な地域で蓄積されているが、未だに多くの地域で、受動喫煙が一般的な室内空気汚染となっており、全人口の93%は禁煙に対する包括的法規制がない国に居住している。
同研究は、世界における受動喫煙による疾病負担を初めて評価したもの。受動喫煙からの相対的な疾患リスクを検討した疫学研究やWHOのデータなど192カ国のデータから、2004年における受動喫煙への暴露率と、受動喫煙による死亡と障害調整生存年数(DALY)を推定した。2004年は各国における包括的な疾患データが最も揃っている年である。
その結果、全世界の小児(14歳以下と定義)の40%と、非喫煙男性の33%、非喫煙女性の35%が、受動喫煙に暴露されていた。最も暴露の高い地域はヨーロッパと西太平洋、南東アジアの一部で、50%以上の暴露率であった。一方、南北アメリカや地中海東岸は暴露率が比較的低く、小児で22~38%、非喫煙男性では15~24%、非喫煙女性は15~35%、アフリカが最低で、小児でも13%であった。
世界の受動喫煙による死亡は、全死亡の約1%にあたる60万3千人と推定され、DALYは受動喫煙によって1090万年の損失を招いたとされる。成人における受動喫煙による最も大きな死因は虚血性心疾患で37万9千人、次いで喘息が3万5800人、肺がん2万1400人であった。小児では、5歳未満での下気道感染症が16万5千人と非常に多かった。DALYの損失の多くは、小児の下気道感染症が原因で594万年。これらの疾病負担の約半分は、南東アジアと西太平洋で占められていた。
疾病負担は性別と年齢により不均等に影響しており、死亡の47%は女性が占め、DALY損失の61%が小児であった。
これらの結果から、受動喫煙への暴露は、依然として最も深刻な室内空気汚染であると言える。能動喫煙による推定死亡人数は510万人であることから、これを加算すると、喫煙による世界の死亡人数は合計570万人に上ることになる。特に暴露率は小児が最も高く、自宅で喫煙する近親者からの暴露という、回避できない状況が浮き彫りとなった。
このことからも、公衆衛生の面と臨床的側面から、全世界的に受動喫煙を削減する有効的な施策が取られるべきであると、研究グループは結論付けた。