キョーリン 沢井提案の経営統合を拒否 13年度以降の国内後発品環境が不透明
公開日時 2010/12/08 04:02
キョーリン製薬ホールディングスは12月7日、同日開催の取締役会で、沢井製薬から提案されていた経営統合を拒否することを決議したと発表した。決議を受けてキョーリンの山下正弘社長が沢井の澤井光郎社長にメールにて、キョーリンの考えを伝えた。キョーリンは、政府の後発品使用促進政策が2012年度までで、13年度以降の後発品の事業環境が不透明であるほか、より廉価な後発品を手掛けるグローバル後発品企業の日本市場本格参入も見通せるため、経営統合によって後発品ビジネスに過度に注力することは得策ではないと判断し、沢井提案を断ることにした。
沢井は今夏に、水面下でキョーリンに経営統合を打診したが、キョーリンは企業価値向上の観点から沢井提案を拒否。それでも沢井はキョーリンに協議を持ちかけ、12月2日には経営統合提案を機関決定した上で、更に提案内容を公開し、キョーリンの全てのステークホルダーに訴える戦略に出た。それからわずか3営業日後に、キョーリンが沢井提案を断ることを機関決定した。
今夏の提案内容と12月の提案内容では、キョーリンを存続会社にすることなど経営統合の手法や条件で違いがあったが、キョーリンは本誌に、「基本的な、本質の部分が何ら異なるものではなかった」とし、今夏に十分検討したことをあって、結果的に回答までの期間が短くなったと説明した。
◎後発品ビジネス 沢井は「高成長事業」 キョーリンは「中長期の成長性に疑問」
キョーリンのいう「本質の部分」とは、新薬事業と後発品事業を経営の両輪とするハイブリッド型製薬企業を目指すというところ。沢井は高成長が期待できる後発品事業で収益を上げて、新薬の研究開発費用をねん出できるなどと主張している。これに対してキョーリンは今回、▽13年度以降の政府の後発品使用促進政策が見えないうえ、長期収載品の在り方も今後の議論となっており、中長期の後発品事業環境が不透明なこと▽グローバル後発品企業の本格参入で「国際的な価格競争」に日本市場も入ること――などから、「(後発品ビジネスの)中長期的な成長性に疑問がある」と指摘した。更にハイブリッド型製薬企業となった場合、「後発品の事業環境変化が当社業績に及ぼす影響は格段に大きくなり、国際的な価格競争などによって後発品事業の収益性が悪化すると、コアとなるべき新薬事業に研究開発費用の削減等の悪影響が及び、当社の経営方針の遂行に支障をきたすことになりかねない」として、沢井提案を断ると説明した。
12月の沢井の提案は11年2月末まで有効だが、キョーリンは本誌に、「今回の回答で失効したものと理解している」とした。一方、沢井は12月7日、キョーリンの回答を受けて、「回答について真摯に検討し、改めて当社の今後の対応を表明する予定」とのコメントを発表した。
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