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深在性真菌症を合併した膠原病患者の治療  (1/2)

公開日時 2010/06/03 04:00
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重篤な腎障害は認めず約8割の症例で有効

 

他抗真菌薬治療抵抗例にアムホテリシンBリポソーム製剤が有効

 

深在性真菌症を合併した膠原病患者に、抗真菌薬・アムホテリシンBリポソーム製剤(製品名:アムビゾーム)を投与したところ、重篤な腎障害や有意な血清カリウム(K)値の低下を認めずに、約8割の患者に有効性を示すことが分かった。大阪医科大第一内科(膠原病内科)の小谷卓矢氏らが4月24日、神戸市で開催された第54回日本リウマチ学会総会・学術集会のポスター発表で報告した。

 

アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)は、アムホテリシンBの脂質製剤。ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の応用により、アムホテリシンBの抗真菌活性を維持した上で、同剤で指摘されていた腎障害・発熱・嘔吐などの強い副作用の軽減を狙った薬剤だ。


小谷氏らは、膠原病患者における免疫抑制療法中に発症した深在性真菌症に対するL-AMBの有効性・安全性について後ろ向きに検討した。


対象は、2006年10月~09年10月までの間に、同科で深在性真菌症を合併したため、L-AMBを投与された膠原病患者13例。全例にL-AMBを2.5 mg/kg(腎機能により、適宜減量)を点滴静注した。治療目的菌種は、アスペルギルスが12例、カンジダが1例。


対象患者の平均年齢は62.4歳。高齢者が多く、70歳を超える症例も5例含まれていた。抗真菌薬の前投与がある症例が8例で、ボリコナゾールが5例、イトラコナゾールが3例、ミカファンギンが3例に投与されていた(重複投与を含む)。そのほか、リンパ球数低値例やアルブミン低値例など感染症のリスクが高い患者が多く、ほとんどの症例にステロイド(平均22 mg/日)や免疫抑制剤が投与されていた。


平均12.5日(4~38日)投与した結果、有効と判断されたのは10例、無効は3例で、有効率は77%だった。なお、有効性については、真菌に由来する臨床症状の改善とともに、①画像検査(レントゲン、CT、内視鏡)の改善②真菌学的効果(培養陽性の陰性化、生検で真菌の消失)③血清学的効果(抗原価、抗体価の陰性化あるいは減少)―のうち、1つ以上が改善し、他は悪化しない場合に有効と判定した。


小谷氏は、この結果と同剤の国内臨床試第2相臨床試験(P2)の結果を照らし合わせ、「膠原病患者に対し、L-AMBは十分な有効性が期待できる可能性がある」と期待感を示した。ただ、P2が血液・移植領域の患者を対象に実施されたことから、「基礎疾患が違うため、単純に比較することには議論が残る」可能性も指摘した。


一方、安全性について、血清クレアチニン(Cr)値は、治療前の0.86±0.50 mg/dLに対し、治療後は1.08±0.53 mg/dL(P値=0.024)で、軽度な上昇は認められたものの、国内臨床試験や海外の報告と比較するとその程度は重くはなかった。また、血清K値も治療前の4.22±0.69 mEq/Lに対し、治療後は3.93±0.65 mEq/Lで、有意な減少はみられなかった(P値=0.202)。ただし、1例でKの補充を必要とした。


小谷氏は、国内臨床試験でみられた肝機能の指標であるALT値の増加がみられなかったことも報告し、忍容性に優れているとした上で、「血清K値が低下する可能性があることから、臨床検査値の変動には注意を払うことが必要」と総括した。

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