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東京大先端科学技術研究センター特任教授の赤座英之氏は5月24日に開かれたノバルティス ファーマ主催の腎細胞がん治療薬「アフィニトール錠5mg」(一般名:エベロリムス)発売記者会見で講演し、同剤の適応取得により、腎細胞がん領域の分子標的薬が3剤となったことを受け、個別化適応の重要性を強調した。
アフィニトールは、mTOR阻害剤として初めて国内で承認された薬剤。複数のシグナル伝達経路が交差する部分に位置するタンパク“mTOR”を阻害し、「がん細胞増殖抑制」と「血管新生阻害」の2つの作用機序により、効果を発現する。
赤座氏は、既存の分子標的薬スーテント(一般名:スニチニブ)、ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)とは作用機序が異なることから、「2つのTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)への効果がなくなったものへの効果が期待できる」と説明。「治療の幅が広がったことは間違えない」と期待感を示した。
ただし、薬価が高額であることから、効果が得られる患者に対する投与を行うことの重要性を強調。「的確な治療開始時期と治療期間を見極めないと、効果が得られないだけでなく、患者さんのQOLも副作用のために低下する」と指摘し、「1番大事なのは各種薬剤の個別化適応基準を作ること」との考えを示した。
一方、安全性については日本人データが「正しく演繹されるのであれば、副作用はかなり少なくない」との考えを表明。「(間質性肺炎をはじめとした)肺臓炎さえ気をつければ、かなり使いやすい」との見解を示した。
肺臓炎については、これまでのところ「無症状で、CTを撮ったら淡い影があるグレード1(軽微な副作用と考えられるもの)であるものが多い」とし、グレード1では投与を継続することとした。ただ、投与を継続することで悪化する可能性もあることから注意深く観察することを求めた。
また、同剤は、もともと免疫抑制剤(ラパマイシン)であることから、感染症のリスクが高まることを指摘し、結核患者や肝炎患者への投与する際には留意することが必要とした。
赤座氏は、同剤のフェーズ3(RECORD-1)に、日本人が24人(エベロリムス投与群:15人、プラセボ投与群9人)しか含まれていないことも指摘。日本人と欧米人では有効性・安全性のプロファイルが異なることから、今後の全例市販後調査(PMS)の結果を待つことの重要性を強調した。なお、同剤は、薬価収載と同日の4月16日に発売されている。
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