発症から3時間以内脳梗塞例 t-PA療法の実施で転帰良好
公開日時 2010/05/17 04:00
rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の実施で、発症から3時間以内に来院した症例の転帰が良好になることが示された。国立循環器病研究センター内科脳血管部門の豊田一則氏が15日、シンポジウム「本邦における脳卒中大規模疫学研究による最新の知見」で、「急性循環器疾患の重症度評価及び治療成績評価システムの開発と効果的運用に関する研究」(循環器病研究委託費19A-2研究、主任研究者:国立循環器病研究センター・横山広行氏)の中間結果として報告した。
研究は、①循環器病疾患の臨床評価指標の選定②重症度補正した診療の質・治療成績の評価③多施設共同疾病登録の方策の提言――を目的に実施された。
この研究に先だって2005年1月~07年3月に行われた「循環器病臨床評価指標の質的向上と効果的活用法の研究」(循委16A-1研究、主任研究者:国立循環器病研究センター・岡山明氏)の結果からすでに、発症から来院までの時間が短縮されることが脳梗塞患者の転帰良好と関連することが分かっている。
この結果を受け、同研究は、国内28施設で08年1月~09年12月まで患者登録が行われた。登録されたのは、脳梗塞・脳出血5128例。このうち、発症から24時間以内に来院した症例は2268例。内訳をみると、3時間以内に来院した症例は33%で、さらにこのうちt-PA静注療法が行われていたのは27%だった。
患者背景などを補正して多変量解析を行うと、t-PA静注施行が退院時の完全自立(mRS 0[まったく症候がない]~1[症候はあっても明らかな障害はない])に寄与するオッズ比は2.10で、有意な正の関連がみられた(95%CI:1.30~3.46:P値=0.003)。
神経症候の重症度を測るスケールであるNIHSSが5点以上(0~42点で、点数が高いほど重症)の患者に絞ってみると、t-PAの静注施行例では、施行しなかった症例に比べ、退院時の完全自立の割合が高いことも分かった。
豊田氏は、2つの研究を比較した結果も紹介。2年間で脳梗塞発症から3時間以内に来院する患者が有意に増加し、また3時間以内来院患者の転帰良好が増えたことも指摘した。