慶應大・竹内教授 リウマチの生物製剤アバタセプト「より根本的な治療に近く」
公開日時 2009/11/26 04:00
慶應義塾大学医学部の竹内勤教授(内科学教室リウマチ内科)は11月24日、ブリストル・マイヤーズが開いたメディアセミナーで関節リウマチの最新治療について講演。現在申請中の関節リウマチ治療薬の新規生物製剤アバタセプトについて効果が優れているだけでなく、懸念される感染症の報告がほとんどないなど、世界的にも安全性が高く評価されていると説明。サイトカイン阻害薬(TNFα阻害剤など)より早い段階で使うことで、薬剤を中止しても寛解が維持できる確率が高い可能性があるとして、「より根本的な治療に近くなる」と実用化に期待を示した。
アバタセプトは承認されれば国内ではレミケード(TNF阻害剤)、エンブレル(TNF阻害剤)、アクテムラ(IL-6阻害剤)、ヒュミラ(TNF阻害剤)に次ぐ5番目の生物製剤となる。作用機序が既存の生物製剤とは異なり、T細胞を抑制するT細胞共刺激阻害薬で、炎症性サイトカインのより上位にあるT細胞の活性化を抑える新しい標的の薬剤。TNF阻害剤の無効例や効果減弱例に対する有効性などへの期待が高い。点滴時間は30分と短時間で済み、投与間隔もはじめの2回は2週間毎でその後は4週に1回投与であり、他の生物製剤に比べて優れた利便性を持つ。
国内フェーズ2試験では、MTXで効果不十分な活動性RA患者に投与したところ、半年後のACR20は10mg/kg群で77.0%(プラセボ群21.2%)で「プラセボ群との効果の差が他の生物製剤に比べて最大」と評価。ACR50は45.9%、ACR70は21.3%だった。一方、重篤な有害事象による中止例は1人もおらず、優れた有効性と高い安全性が確認されたという。
竹内教授は罹病期間8~10年の患者に対するレミケードやエンブレルの投与半年後の寛解導入率は2~3割であり、「TNF阻害剤で寛解導入率を5~6割まで持っていくのは難しく、寛解率は十分とはいえない。もう少し寛解率を高めたいのが我々の望み」と指摘。安全性に関しても、レミケードやエンブレルでは重篤な副作用の発症率が5~6%(ほとんどが感染症)であり、ヒュミラやアクテムラでも同様の副作用が想定されるなど、機序的に切っても切り離せない感染症(細菌性肺炎の発症率はレミケード2.2%、エンブレル1.3%、結核はレミケード0.28%、エンブレル0.07%)の克服が課題であるとして、新規作用機序のアバタセプトの臨床応用に期待を示した。
同剤は米国では05年12月、欧州は07年5月に承認され、世界40カ国以上で発売。08年度の全世界での売上高は約441億円(対前年比91%増)。なお、米国では生物製剤の第一選択薬として用いられているが、欧州では第二選択薬として使用されている。