政府の行政刷新会議のワーキンググループ(WG)は11月11日、無駄と思われる事業やテーマを公開で査定し、当該事業の存廃や見直しといった方向性を取りまとめる「事業仕分け」を開始した。この日、後発品のある先発品(長期収載品)の薬価の在り方などが査定対象となり、最終的には、特許切れ後の市場でのトータルの薬剤費を大幅に削る方向で見直すべきとの結論になった。ただ、薬剤費圧縮の手法に関しては、財務省が主張する長期収載品の薬価を後発品水準を目指して引き下げるのか、それとも、厚労省が主張する後発品のシェア拡大につながる施策をとるのかといったところまでは結論が出なかった。
事業仕分けでは、基本的に1事業ずつ、当該事業を担当する省庁がその必要性を説明したのち、査定官庁の財務省が論点や見解を提示。その上で国会議員や民間評価者の計10数人が約40分、担当省庁や財務省を相手に質疑する。そして財務省の論点に対して国会議員と民間評価者が、議論の終盤に配布される「評価シート」に事業の存廃などを記載して当該事業を評価する形で進められた 。この日の結論は行政刷新会議に報告され、最終判断される。ただ、事業仕分けでは、一般国民の視点を反映させる方針とはいえ、「素人でよくわからない」と専門性の高いテーマまで、10数人で多数決のような形で一定の方向性まで出すため、その手法や妥当性に疑問の声もあがりそうだ。
この日は医薬品関係の事業として、長期収載品の薬価のほかに、調整幅2%の見直し、OTC類似薬の薬価を保険対象外とするかどうかがテーマとなった。
◎長期収載品は後発品の薬価を目指すべき
長期収載品の薬価については、国会議員と民間評価者の計15人のうち13人が「後発品薬価を目指して見直すべき」とした。ただ、各評価シートには、財務省と厚労省のそれぞれの見解を支持する意見があり、議論のまとめ役の枝野幸男議員は、「どちらか一方に決め打ちではないが、いずれにしても後発品のある分野についてのトータルの薬価を大幅に削る方向はほぼ全体のコンセンサス」と総括した。
議論に出席した厚労省の足立信也政務官は、財務省に対し「後発品と長期収載品の価格を同程度にすると、なぜ後発品の普及につながるのか。論理が破たんしている」と質す場面もあった。これに財務省は、「先発品の薬価が後発品まで下がれば、(医師や保険薬局が)先発品の薬価差益を取るメリットがなくなる」と説明。また、結果的に新薬メーカーの投資を新薬開発に集中させることにもつながるとの認識も示した。これまで財務省は、長期収載品の保険適用範囲を後発品水準までとした上で、メーカーが後発品の薬価水準以上の価格で販売したい場合には患者全額負担にする仕組みを主張していたが、この日は長期収載品の薬価は後発品水準を目指して引き下げるべきと転換した。
一方で、調整幅2%の縮小については、厚労省が小包装対策の意味合いがあると説明したのに対し、財務省が国民負担の軽減や医薬品取引の効率化の観点から「2%上乗せの慣行は縮小すべき」と提案。議論の結果、15人中8人が縮小を支持したが、枝野議員が「議論の時間も短かったので、縮小という有力な意見が示されたとして取りまとめたい」とした。OTC類似薬の扱いに関しては15人中11人が公的保険から外すという財務省の方向を支持したが、保険適用外とする医薬品の対象範囲までは「議論が必要」となった。