09年度補正予算 未承認薬等開発支援の9割執行停止 患者らショック
公開日時 2009/10/08 04:02
10年度政府予算の財源捻出のため09年度補正予算の大幅見直しを進めている鳩山内閣で、753億円が計上されていた未承認薬・未承認適応の開発支援について長妻昭厚生労働相が、9割近くにあたる653億円を執行停止する方針を示したことに対し、翌7日、業界関係者、患者らはショックを隠せない様子だった。未承認薬問題は、患者にとって生命を左右しかねない問題で、それだけに補正見直し対象にはならないというのが大方の見方だった。民主党は「ひとつひとつの生命を大切にする」とマニフェストに掲げている。そのため今回の執行停止方針と党の方針との整合性を問う声も上がった。
今回の方針で執行されるのは未承認薬開発支援の100億円で、未承認適応開発支援は見送られる方向となった。7日は偶然にも、日本製薬工業協会によるシンポジウム「未承認薬・未承認適応問題の早期解決に向けて」が都内で開催された。庄田隆会長は冒頭のあいさつで執行停止方針に触れ、「未承認薬問題の解決に向けての努力は続けられていくものと固く信じている」と述べたものの、ショックは隠せない様子。会場にいた川邊新専務理事は、本誌に、「問題を解決できるように来年度予算で手当てしてほしい」と話した。
シンポに出席した国立病院機構名古屋医療センターの堀田知光院長(厚労省の未承認薬使用問題検討会議座長)は「ショックを受けた」と発言。未承認薬開発に取り組むノーベルファーマの塩村仁社長は「私ども、患者さんにとって大地震が起きた。大変由々しきこと」と、執行停止方針を批判した。
会場で傍聴していた「はばたき福祉事業団」の大平勝美理事長は、「(執行停止の方針は)心外だ。生命を大切にするという政党がなぜ」と述べ、ほか業界関係者からも同様の声が聞かれた。シンポジストのひとりで、未承認適応問題に注力してきた「卵巣がん体験者の会スマイリー」の片木美穂代表は、本誌に、「長妻さんが大臣になった時から覚悟していた。この問題は分かりづらい。分かってもらうしかない。長妻大臣にアクセスできるよう努力するしかない」と語った。
一方で片木代表は、「これを機に前向きに取り組んでいきたい。お金の問題より、システムを変えてほしいと今後も主張していきたい」とも述べた。欧米で実施されている、重篤な疾患で代替薬がない場合に一定条件の下で未承認薬を利用できるようにするコンパッショネート・ユース(CU)制度といったシステムで、シンポでは堀田院長も必要性を訴えた。
シンポに出席した厚労省医政局研究開発振興課の佐藤岳幸治験推進室長は、執行停止の経緯について「当初実は、初年度を除いて次年度以降の開発支援について執行停止するという話があった。その中で、薬の開発には単年度ではなく、複数年度必要であり、複数年度の支援ができるようにして欲しいと、我々はお願いした」と説明。執行停止額など詳細は「政治主導」による決定だったという。