ファーマ・インサイト より深い患者フォーカスへの一歩:B2Cの事例から学ぶエクササイズ
公開日時 2009/10/07 23:00
「ファーマ・インサイト」がスタートする記念すべき第1回は、激変するヘルスケアビジネスの中で日々頑張っているMRの方々や、それを支援している方々に私が感じている事をお伝えし、MR活動が更に医師や患者さんのために役立つようになってもらいたいと願って発信します。
皆様のご意見や反論を心から楽しみにしています。
製薬業界でもよく、カスタマーフォーカスや患者フォーカスといった言葉を耳にします。しかし自分がどこまで本当に患者さんのことを理解しているのか、深く考えてみたことはありますか? ご自分のマインドセットを整えるために、ひとつエクササイズを試してみてください。患者フォーカスなどの言葉に本当の意味をもたらすエクササイズです。
次回の施設訪問の際、患者様個人のイメージを頭の中で想像してみて下さい。一症例としてではなく、一患者様として考えてみた上で、情報を正確に伝える。このマインドをもつことで、担当する薬剤が果たせる貢献についてより的確な表現をすることができると思います。
B2Cのマーケティングでは、架空の個人消費者を「ターゲット(理想顧客)」として表現することが多々あります。例として、数年前に私が参加したある日系企業の米国健康食品プロジェクトを挙げましょう。環境分析を行い、大きなトレンドや競合他社との比較をはっきりさせたあと、この健康食品の理想顧客は以下のような人物であると想定しました。
「○○ブランドのターゲットは、27歳のSARAHです。SARAHは公立大学で国語を勉強したあとIT系の会社に入社し、3年間営業職でそこそこの実績をあげましたが、不満を感じて退職しました。その後レストランでバイトをしながら経理関係の資格をとり、去年めでたく会計事務所に就職。独身で、アパートは同性のルームメイトとシェアしており、結婚はまだ考えていません。ゴミの分別を試みてはいるけれど、使い切った乾電池はコンビニのゴミ箱に捨ててしまいがちです。SARAHはテニスとヨガが好きで、週末に最低一時間は運動ができないとイライラしてしまいます。」
どうでしょうか? 設定はまだまだ続き、その細かさに非常に感心してしまいました。
これだけ徹底的に、理想顧客のライフスタイルを理解しようと試みる努力は素晴らしいものです。もちろんこれはあくまで架空の「顧客」ですが、チーム一同がSARAHのために、SARAHの欲しい健康食品を作り上げ、それを市場に提供できる日が楽しみでした。チームミーティングでは「この色はどう?」という質問より、「SARAHはこのパッケージについて、どう思うだろう」というようなやりとりが頻繁に交わされていました。
あなたが毎日がんばっている仕事。それはいったい誰のためなのか、自分にとってのSARAHをイメージしてみるのはいかがでしょうか?
ジェフリー・シュナック(Jeffrey B. Schnack) 1967 年米国生まれ。 米国とヨーロッパの大学院で国際政治経済学修士およびMBAを取得。1990年来日。外資系コンサルティング会社にて欧米企業のアジア戦略プロジェクトを 実行。その後JR東日本初の海外子会社代表などを務める。スリーロック株式会社は2004年より、製薬企業を対象に営業・マーケティング分野のコンサル ティング及び能力開発プログラムを実施している。
スリーロックHP http://www.3rockconsulting.com 本人ブログ http://blog.3rockconsulting.com/