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モデルナ・バンセルCEO mRNA製造施設、日本で建設検討 年1回投与型新型コロナワクチンの開発も

公開日時 2022/09/15 04:51
米モデルナのステファン・バンセルCEOは9月14日、東京都内で記者会見し、新型コロナワクチンなどを生産するmRNA製造施設を日本に建設することを検討していると述べた。パンデミックの中で社会から求められるワクチンを迅速に開発・提供するためには「(製造施設は)各大陸にひとつはいると思った」とし、科学技術力があり、医療レベルの高い日本に製造施設を置くことに意欲をみせた。新型コロナウイルス感染症に関しては、「ウイルスはいなくならない。コロナと共に生きていく時代になる」と指摘。季節や地域に適したカスタマイズされた年1回投与型追加免疫用ワクチンや、新型コロナと季節性インフルエンザの混合ワクチンを開発・提供するビジョンも示した。

◎「将来起こり得るパンデミックから日本国民を守る」 政府指令から数カ月でワクチン提供

バンセルCEOは、「日本国内でのmRNA製造施設の建設を検討し続け、将来起こり得るパンデミックから日本国民を守り、日本でのmRNAサイエンスの発展に貢献する」との考えを示した。そして、「日本の工場で、日本のチームによって、日本の方々のために(mRNAワクチンを)製造していくことが重要」と話した。世界に建設・配置するmRNA製造施設は、基本的に設計や設備は同じとする方針。原薬の調達に関しては、「地政学的、地理的リスクを薄めるために検討しないといけない。各国にサプライヤーがいるので、柔軟性を持ちつつ、ネットワークを構築したい」と述べた。

会見に同席した日本法人の鈴木蘭美社長は、国内製造施設の建設プランに関し、「日本に製造拠点を作り、国産の最高品質の安全なワクチンを日本の皆さんに届けたい」、「日本政府の指令から数カ月以内に全国民に有効なワクチンをお届けするというもの」と説明した。バンセルCEOが今回の来日時に国会議員や政府関係者と対話するとした上で、「我々が成し遂げようとしている重要性や意義を理解いただければと期待している」と強調した。

同社は日本のほかにカナダ、米国、英国、スイス、オーストラリア、ケニアに製造施設を置く計画だという。同社は5月27日開催のオンラインメディアセミナーで、カナダやオーストラリアでは政府と長期契約を結んだ上で22年から着工したことを明らかにしており、日本も同様のスキームでの製造施設建設を目指すとみられる。

◎BA.4/BA.5対応の2価ワクチン 年内の供給を予定

同社はこれまでに、オミクロン株BA.4/BA.5対応の新型コロナワクチン(2価ワクチン)を近く日本で承認申請する方針を示している。具体的な申請時期について鈴木社長は、「申請時期は明言しないが、年内の11月、12月にはBA.4/BA.5対応の2価ワクチンを接種会場でお届けできることを予定している」と述べた。ファイザー及びビオンテックのBA.4/BA.5対応の2価ワクチンは9月13日付で申請されている。

◎mRNA技術の特許侵害 コロナ禍初期に認識

モデルナは8月に、mRNAワクチン技術に関する特許が侵害されたとして、ファイザーとビオンテックの2社を提訴した(関連記事はこちら。モデルナはこれまで、パンデミック期間中は特許権を行使しない方針(Patent Pledge)を示していた。

バンセルCEOは、コロナ禍に突入した初期の頃からモデルナ経営陣はファイザー及びビオンテックのワクチンが特許侵害に当たると認識していたが、「ファイザーのチームも懸命にワクチンを市場に届けようと努力していた。共通の敵がウイルスだった」との理由で黙認していたと当時を振り返った。ただ、「今の状況は違う。ワクチンに対するアクセスは問題になっていない」と強調し、「知的財産はこの業界の基盤だ」として訴訟に踏み切ったと説明した。

◎新型コロナ+インフルエンザの混合ワクチン 24年の承認取得目指す

モデルナは8月時点で46の開発プロジェクトがある。mRNA技術を用いたもので、今後はワクチンだけでなく治療薬も開発し、市場投入する計画だ。

新型コロナワクチンに関しては、インフルエンザのように、ウイルスの型に応じたカスタマイズされた年1回投与型の追加免疫用ワクチンを検討する。バンセルCEOは「ウイルスが変異すれば、製品のアップデートも必要」と指摘し、ウイルス型が判明してから「2カ月で製造して出荷できる」と自社の技術に自信を見せた。

新型コロナと季節性インフルエンザの混合ワクチン(開発コード:mRNA-1073)は24年の承認取得を目指して開発中。季節性インフルエンザ用ワクチン(mRNA-1010)は、23年の承認取得に向けて、第3相臨床試験で安全性と免疫原性を確認中だと説明した。

「呼吸器系ウイルス全般に対する年1回の追加予防接種」の実現も目指す考えで、新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルスの3種混合ワクチン(mRNA-1230)なども開発中。開発に成功すれば世界初となる妊娠前の女性のためのサイトメガロウイルス(CMV)感染症ワクチンは第3相試験段階にあると紹介した。

◎個別化がんワクチン「mRNA-4157」 年内に試験データ判明

mRNA治療薬に関しては、米メルクと共同開発している「個別化がんワクチン」(mRNA-4157)が第1相試験を実施中で、第2相試験は登録済みだとした。バンセルCEOは「試験結果データが22年第4四半期に入手予定」とし、開発に成功した場合は「世界で最良クラスに入る治療選択肢になる」と期待感を示した。mRNA-4157は、がん患者1人ひとりから正常細胞とがん細胞を摘出し、ゲノム解析してその違いを特定した上で1つのワクチンに入れ込み、がん免疫療法薬・キイトルーダと併用するもの。このほか、希少疾患のプロピオン酸血症(PA)に対する治療薬(mRNA-3927)の試験結果データも年内に出る見通しと報告した。
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