厚労省・城審議官 有識者検討会で業界は「ファクトベースでロジカルな議論を」 国民目線での提案求む
公開日時 2022/08/30 04:52
厚生労働省の城克文医薬産業振興・医療情報審議官は本誌インタビューに応じ、「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」の立ち上げを前に、「製薬業界には、“経営が厳しい”と訴えるだけではなく、ファクトや実態をお話いただき、それが薬価制度に起因しているというならどの仕組みとどういうつながりか、教えていただきたい」と強調した。有識者検討会では“国民目線”で議論を行う考えを強調。「趣旨に合わないプレゼンテーションはスルーされるだけだ」と指摘した。また、製薬業界は中間年改定を最大の焦点に据えるが、「もしされるのであれば、中間年改定の実施により、国民に対してどのような悪い影響が起きるのか、直すために中間年改定をどうしてほしいか、ファクトベースでロジカルにお話いただくのがよいのではないか」と話した。
Monthlyミクス9月号では、「ステークホルダーが語る流通・薬価制度」と題した巻頭特集を企画しました。城審議官には研究開発型、ジェネリックメーカー、医薬品流通の課題認識や、日本市場への見解などについてお話をうかがいました。インタビューは一問一答で全文掲載予定。
城審議官は、「有識者検討会はあくまで国民の視点で、医薬品の迅速かつ安定的な供給をするために、ファクトとして何が起きているかを示し、それを突き詰めるとどこに課題があるのか、解決策を検討するものだ。薬価制度に由来して、医薬品の供給現場や製造現場、イノベーションの開発現場、流通現場の行動が規定された結果、歪みが起きているのではないか。そういったことを明らかにしたうえで、解決策の選択肢を提案していきたい」と話した。
製薬業界に対しては、「“経営が厳しい”と訴えるだけではなく、ファクトや実態をお話いただき、それが薬価制度に起因しているというならどの仕組みとどういうつながりか、教えていただきたい」と表明した。
◎解決策の「メリット、デメリットも示せればなおいいかもしれない」
製薬業界は中間年改定について実施の是非を含めた検討を求めている。城審議官は、「(業界の)ヒアリングはたぶん意見を主張する場ではないが、仮にそういうお話でも別に止めはしない。するとも聞いていないので、何とも言えないが」と話した。
そのうえで、「もしされるのであれば、中間年改定の実施により、国民に対してどのような悪い影響が起きるのか、直すために中間年改定をどうしてほしいか、ファクトベースでロジカルにお話いただくのがよいのではないか。それぞれの解決策のメリット、デメリットも示せればなおいいかもしれない」と述べた。
◎医薬品流通 シェアに応じたアローアンス設定「なぜ起きるのか聞いてみたい」
有識者検討会の焦点の一つとなる医薬品流通については、「単品単価取引の推進と言いながら、最後はどこかで総価的に帳尻合わせをしている取引がある。2社、3社で流通しながらシェアに応じてアローアンスを設定している。こういうことがなぜ起きるのかは、個人的にも聞いてみたい」と話した。
◎社会保障費論も「次のステージに行かないとダメだ」
物価・エネルギー価格の高騰などの影響を懸念する声もあるが、「製薬産業も他産業と同様に、人件費をあげる必要もあるし、物価・エネルギー価格高騰、材料費高騰などの影響も受けている。それにもかかわらず、高齢化の伸びを超える部分は製薬産業が背負っている。その構造そのものが次のステージに行かないとダメだと思っている」と話した。ただ、こうした課題は日本国民全体の課題でもある。城審議官は、「新型コロナの財政出動もあり、日本経済が疲弊しているなかにあって、なかなか手を打てる状況にはないと思う。24年度には診療報酬・介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定も予定されているが、記載できれば、と思う要素の一つではある」と話した。
◎23年度改定に向けて10月に意見とりまとめ
有識者検討会では8月31日に初会合を開催。その後、業界ヒアリングを行い、それを踏まえた議論を毎週行う予定。まずは、23年度改定に向けて10月に意見を取りまとめる方針。24年度改定に向けては22年度末までの提言取りまとめを目指す。