塩野義製薬 新規抗菌薬セフィデロコルで緑膿菌感染者の65%に臨床的治癒 後ろ向き観察研究の中間解析
公開日時 2023/04/18 04:51
塩野義製薬は4月17日、新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコルを用いて欧米地域で行った後ろ向き観察研究の中間解析で、合併症を伴う重症患者である緑膿菌感染症患者の65%、アシネトバクター感染症患者の60%に臨床的治癒を確認したと発表した。緑膿菌やアシネトバクターなどの感染症はWHOの最優先リストに分類されるもので、効果的な治療法が早急に必要とされていた。中間解析の結果は、4月15~18日にデンマーク・コペンハーゲンで開催中の第33回欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)で発表される。
セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬。カルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮する。
◎緑膿菌感染症患者の65%で臨床的治癒を達成、81%が治療開始後30日時点において生存
同剤を用いた国際的な後ろ向き観察研究(PROVE:Retrospective Cefiderocol Chart Review)は、実臨床で最も治療が困難とされるグラム陰性菌感染症入院患者に対するセフィデロコルの有効性、安全性を評価した。同剤を投与された緑膿菌感染症患者194人(米国123人、欧州71人)のうち、191人を評価した。患者は呼吸器感染や血流感染の割合が多く、人工呼吸器や昇圧剤の投与を必要する重篤患者も多数含まれた。なお、57%は単剤使用。中間解析によると、緑膿菌感染症患者の65%で臨床的治癒を達成し、81%の患者が治療開始後30日時点において生存した。
◎アシネトバクター感染症患者の60%で臨床的治癒を達成、76%が治療開始30日時点で生存
一方、アシネトバクター感染症の患者98人(米国71人、欧州27人)のうち96人に対して評価した。共通して見られたのは呼吸器感染症および菌血症で、45%が人工呼吸器治療を受け、30%が昇圧剤の投与を必要としていた。また、患者の93%で初回治療または救急治療として同剤を投与し、41%が単剤治療だった。中間解析によると、アシネトバクター感染症患者の60%で臨床的治癒を達成し、76%の患者が治療開始から30日時点において生存していた。
ハンブルク・エッペンドルフ大学のDominic Wichmann教授は、「今回の中間解析結果は、欧米で蓄積されたリアルワールドデータに基づき構築されたもので、セフィデロコルは、アシネトバクターや緑膿菌などの生命を脅かす感染症に罹患し、その大半が複数の併存疾患を有する重篤な患者の治療における有効性を示した」と強調した。
セフィデロコルは、欧米で承認を取得しており、欧州はFetcroja、米国はFetrojaの製品名で販売されている。すでに日本と台湾で承認申請を行っている。また、多くの低中所得国、高中所得国で同抗菌薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、GARDPおよびCHAIとの3者連携契約を通じて準備を進めている。