PhRMA・フェリシアーノ委員長「投資利益率が明確でなく日本は魅力ない」エコシステム構築で政府と協働
公開日時 2021/10/29 04:52
PhRMA在日執行委員会のジェームス・フェリシアーノ委員長は10月28日のオンライン会見で、「先進諸国の中で日本は一番魅力がない市場だ。成長予測をみても分かる。我々にとって心配だ」と強調した。厚労省が9月に公表した「医薬品産業ビジョン2021」では、創薬エコシステムの構築を提言し、「投資に見合った対価の回収見込みが重要」と強調している。これに対しフェリシアーノ委員長は、毎年薬価改定の実施などで「投資利益率が明確でなく、(日本の)市場に魅力がない。魅力がないと人々は投資をしない。本当に単純な計算だと思う」と指摘。「我々は政府と一緒にこうした政策を作るためのアドバイスを行い、協働したい」と述べた。
この日の会見でPhRMAは、医薬品産業ビジョン2021の実現に向けた課題や見解を示した。ファリシアーノ委員長は、「ビジョンの実現には研究開発の成功に見合った対価の回収が可能なエコシステムの構築が重要」と強調。ただ一方で、日本市場の成長を阻害している要因の一つが18年以降の薬価制度のルール変更にあると述べ、「近年は約半数の新薬は特許期間の薬価を維持出来ず、新たな研究開発への投資を困難にしつつある」との認識を示した。
◎「市場の予見性や予測性のサイクルを回して透明性を担保。こうした仕組みが徹頭徹尾必要だ」
創薬エコシステムについてフェリシアーノ委員長は、「米国では様々なベンチャーキャピタルがバイオ企業に投資して実績をあげている」と説明。厚労省の医薬品産業ビジョンが提唱する「創薬エコシステム」の考えに理解を示しながら、「市場の予見性や予測性のサイクルを回して透明性を担保する。こうした仕組みが徹頭徹尾必要だ」と指摘した。ただ、日本市場における現状認識として、政府主導の薬剤費抑制策により市場の伸びが相殺されていると指摘しながら、「チャレンジだと思うが実際に投資利益率が分からなければ企業は投資できない。ベンチャーキャピタルも入ってこない。エコシステムを語るときに、我々はこのような主張を行っている」と強調した。
◎「我々の仕事はイノベーティブな製品を日本に持ってくること。取り残されて欲しくない」
フェリシアーノ委員長は、「我々の仕事はイノベーティブな製品、革新的な新薬を日本に持ってくること。日本が取り残されて欲しくない。日本は最先端に立って欲しい」と訴えた。また日本政府との話し合いを継続する姿勢を示し、「引き続き投資をこの市場に行うためには、政府と一緒にこうした政策を作るために協働したい。それにより世界のベストプラクティスを共有できる。それこそが我々の目標だ」と意欲を示した。
◎次期薬価制度改革に向け市場拡大再算定の見直しなど求める
一方で次期薬価制度改革に対しては、①革新性・有用性の高い効能を収載後に追加した品目の薬価上の評価、②市場拡大再算定の見直し、③中間年改定の再考-を求める姿勢を表明。「イノベーション評価と医療保険財政・国民負担軽減のバランスが取れた薬価制度改革が必要だ」と訴えた。