厚労省 再生医療等製品2製品を承認 がん治療用ウイルス・デリタクト注など
公開日時 2021/06/14 04:51
厚生労働省は6月11日、再生医療等製品2製品を承認した。第一三共のがん治療用ウイルス「デリタクト注」(一般名:テセルパツレブ)は、悪性神経膠腫を効能・効果としており、条件・期限付き承認とした。有効性と安全性を評価するためのデータを7年間収集し、改めて承認申請して審査することが求められる。
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の自家培養口腔粘膜上皮「オキュラル」(一般名:ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート)は、最も重症度の高いグレード3の角膜上皮幹細胞疲弊症に対する治療法となる。
【承認品目】(カッコ内は一般的名称、申請企業)】
▽デリタクト注(テセルパツレブ、第一三共):「悪性神経膠腫」を効能・効果又は性能とする再生医療等製品。先駆け審査指定品目。希少疾病用再生医療等製品。最適使用推進ガイドラインの対象品目。7年間の条件及び期限付き承認品目。
遺伝子組換え技術により、がん細胞でのみ増殖するよう設計された人為的三重変異を有する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型(第3世代がん治療用単純ヘルペスウイルス1型)。がん細胞に同ウイルスを感染させると、ウイルスが増殖するとともにがん細胞を破壊・死滅させ、抗腫瘍免疫も誘導するとされる。
同製品はグレード3、4の悪性神経膠腫に対する治療法。基本的に、放射線治療及びテモゾロミドの治療歴を有し、治療後にも腫瘍が残存または治療後に再発した病変数が1つの膠芽腫患者に対する治療法となる。
同製品は東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授らにより創製されたもので、第一三共は藤堂教授と共同開発した。なお、同製品はこれまで「G47Δ」と呼称していた。第一三共によると、G47Δは、単純ヘルペスウイルス1型の3つのウイルス遺伝子を改変して、藤堂教授らが作製した世界初の第三世代のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルスの総称のこと。
▽オキュラル(ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング):「角膜上皮幹細胞疲弊症」を効能・効果又は性能とする再生医療等製品。希少疾病用再生医療等製品。
自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製する自家培養口腔粘膜上皮由来細胞シートで、同シートの移植により、患者自身の口腔粘膜上皮細胞を生着・増殖させ、欠損した角膜上皮を再建・修復させることを目的としている。
角膜上皮幹細胞疲弊症で最も重要度の高いステージ3(角膜表面全体が結膜組織で被覆されている状態)に対する治療法となる。
大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)が開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート技術を同社が導入するとともに、同社が、同教授が実施した医師主導治験を引き続いで企業治験を行った。
角膜上皮幹細胞疲弊症は、結膜と角膜の境界領域である角膜輪部に存在する角膜上皮幹細胞が、先天的または外的要因などによって消失することで発症する疾患。角膜が混濁し、視力の低下や、眼痛などの臨床症状が見られる。今回の承認により、患者自身の健常眼から採取した角膜輪部を患眼に移植する既存治療法では困難だった、正常な角膜輪部が残存していない角膜上皮幹細胞疲弊症を治療でき、患者QOLの向上が期待できる。なお、患者自身の眼から採取した角膜輪部を患眼に移植する治療法として、J-TECのネピックが承認されている。