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21年度薬価改定 平均乖離率1倍以下(8.0%以下)の品目含める方向で最終調整 全品目の5割以上が対象に

公開日時 2020/12/14 04:52
政府は2021年度薬価改定の対象範囲について、平均乖離率の1倍以下(8.0%以下)の品目も含める方向で最終調整に入った。全品目の5割以上が対象で、新薬も2割以上含まれる。医療費削減額は3600億円以上を見込む。2年に1回の通常改定とは位置づけが異なることから、全品改定は避けられる見通し。新型コロナウイルス感染症の影響で全産業が影響を受けるなかで、国民負担の軽減を実現する改定となりそうだ。ただ、医療関係団体や製薬業界はできる限り対象範囲を狭めるよう、強く抵抗を示しており、ギリギリの調整が進む。政府は、予算編成過程で、今週中にも決定する。

厚労省は、全品改定を実施した場合の医療費削減額は4700億円と試算。平均乖離率1倍超を対象とした場合、品目数は約5割(8700品目)だが、医療費削減効果は70~80%に当たるとして、平均乖離率の1倍超を基準として調整に臨んできた。一方、財務省は、毎年薬価改定の初年度に当たる2021年度改定について、「初年度にふさわしい改定」とすべく、「全品改定」を主張する。経済財政諮問会議の民間議員も、「少なくとも8割」の品目を対象とすることを提案する。

◎「全品改定」は回避の方向

中間年改定の対象範囲については、2017年に決定された薬価制度抜本改革骨子で「国民負担軽減の観点から、できる限り広くすることが適当とする」と明記されている。ただ、2016年末に4大臣合意された「薬価制度抜本改革に向けた基本方針」では、「価格乖離の大きな品目」を対象とするとしており、整合性を取る観点から、全品改定は避けられることとなりそうだ。

21年度改定をめぐっては、新型コロナウイルス感染症の影響が医療現場に色濃いことなどから、医療関係団体や製薬業界は、平時と異なるとして見送りまで踏み込んで反発を強めていた。ただ、20年9月実施の薬価調査では乖離率が8.0%と19年9月調査の結果(8.0%)と同程度で、妥結率や単品単価の割合など、いずれの数値をとっても例年並みであることが示されており、新型コロナの影響は外形的には表れない結果となった。

◎厚労関係議員、医療関係団体、製薬業界は「対象範囲は最小限で」慎重姿勢を崩さず

これに対し、厚生労働関係議員や医療関係団体、製薬業界は反発を強めてきた。製薬業界は、明確なエビデンスはないものの、「医薬品取引が平時とは大きく異なる状況の中で実施されたものだ」などとして、「薬価と実勢価格の乖離率が全ての既収載品目の平均乖離率よりも著しく大きい品目に限定すべき」と主張。事実上、21年度改定の実施が避けられなくなって以降は、改定範囲を全品目の平均乖離率の2.0倍以上とするよう、ロビー活動を進めてきた。医療関係団体も、新型コロナの影響で負担が大きいことに加え、診療報酬改定のない年であることから対象範囲を最小限にすべきだと主張してきた。

一方で、政府与党内では、多くの産業が打撃を受けるなかで、高い利益水準を維持する製薬産業について、「コロナ禍の影響を特別に受けているとは言い難い」との見方もある。

◎中医協薬価専門部会で日薬連・手代木会長「我々も国民負担の軽減に貢献してきた」

政府内の調整が進むなか、12月11日の中医協薬価専門部会では製薬業界の意見陳述が行われた。日本製薬団体連合会(日薬連)の手代木功会長は、「薬価と実勢価格の乖離率が全ての既収載品 目の平均乖離率よりも著しく大きい品目に限定すべき」と主張。12月に薬価収載された後発品は対象から除外することなども求めた。

手代木会長は、「2年に1回の薬価改定に加え、拡大再算定などの導入で社会保障費のセービングの70%から80%が薬価に依存している」などと述べ、製薬業界全体として国民負担の軽減にこれまでも貢献してきたと強調した。また、乖離率が毎年8%で推移しているなかで今回の改定実施の影響について問われ、「企業がずっと拠出しながら国民負担の軽減に努力をするということは意見としては承るが、それでは事業が成り立たない」などと述べた。

乖離率については、「単品単価を医薬品の価値に基づいて薬価に近い所で販売いただきたいとずっとお願いしている。そのうえで卸と医療機関の間で交渉してでてきた数字が乖離率で、理想はゼロだ」とも述べた。このほか、後発品に偏る改定になるのでは、との質問に対しては明言を避けた。なお、この日の意見陳述にも日本ジェネリック製薬協会は同席しなかった。

◎PhRMA・フェリシアーノ在日執行委員会副委員長「こういう状況だと日本は消えてなくなる」

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジェームス・フェリシアーノ在日執行委員会副委員長は、「仮に日本が新薬を含む幅広い品目について毎年薬価を引き下げる仕組みに移行したとすると、G7のなかでその仕組みを持つ唯一の国になる。日本はイノベーションを推進する世界的リーダーの増から底辺に向かって滑り落ちることになりかねない」との見解を表明した。

さらに、「現時点で大きな競争相手は、他の製薬企業ではなく、アッヴィ中国だ」などと反発した。これに対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が「日本の国民皆保険制度についてどう考えるのか。厳しい状態の中で未来にわたって、国民皆保険を維持しないといけないため、皆が痛みを分かち合おうということだ」と厳しく指摘。これに対し、国民皆保険の意義について認めたものの、「こういう状況になると日本は消えてなくなってしまうのではないかとさえ思う。本国の目から見ると、投資その他、日本のプライオリティが下がるのは間違いない」などと意見を述べた。

このほか、日本市場の状況について、「(2016年末の)4大臣合意に基づいて良い方向に動いていたが、一夜にして目の前で合意は単なる紙切れになってしまっている」とも述べた。なお、4大臣合意には毎年薬価改定の実施についても提言されている。

◎診療側・松本委員「平均乖離率の2倍程度にとどめるべき」


この日の中医協薬価専門部会で、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「最後に関係するのは薬剤費の削減総額だ。診療側として総額が医療機関や薬局、卸に与える影響を考えると、事務局の案では平均乖離率の2倍程度の最小限に留めるべきだ」と主張。一方、支払側の幸野委員は、「平均乖離率8%はあくまで基準」と表明。事務局に、平均乖離率未満の試算を次回の中医協で提示することを求め、厚労省側もこれを了承して、この日は幕を閉じた。
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