薬食審・第一部会 フォシーガの慢性心不全の適応追加、承認了承 SGLT2阻害薬で初
公開日時 2020/10/30 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は10月29日、Web会議でSGLT2阻害薬フォシーガ錠(一般名:ダパグリフロジン)の慢性心不全の適応追加を審議し、承認することを了承した。正式承認されれば、SGLT2阻害薬で心不全適応を持つ初の薬剤となる。
この日は報告品目も1品目だった。経口腎性貧血阻害薬のHIF-PHD阻害薬エベレンゾ錠(同ロキサデュスタット)について、既承認の透析期のほかに、保存期でも使えるようにすることが部会に報告された。
両剤とも11月にも正式承認される見込み。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽フォシーガ錠5mg、同錠10mg(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、アストラゼネカ):「慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
SGLT2阻害薬。現在の効能・効果は2型糖尿病と1型糖尿病。今回、2型糖尿病の合併の有無によらず、慢性心不全に対してβブロッカーやACE阻害薬などの標準治療に上乗せする形で使用できるようにする。
慢性心不全の用法・用量は、「通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する」となる。
また、添付文書の「効能・効果に関する注意」に、▽左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。左室駆出率が保持された慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していない▽「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること――と記載することになった。同剤の慢性心不全の適応追加の承認申請に用いた国際共同第3相試験「DAPA-HF試験」では、2型糖尿病の合併の有無に関わらず、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象に試験したことが理由となる。
正式承認されれば、SGLT2阻害薬で慢性心不全の適応を持つのは同剤が初となる。同剤が心不全改善に関与する作用機序は明らかではないものの、申請者のアストラゼネカによると、「体液量調節を介した血行動態に対する作用等(浸透圧利尿等による前負荷軽減等)、血糖降下作用とは別の本薬の作用が心不全の改善に寄与する可能性が示唆されている」という。
海外では20年5月に、慢性心不全に係る効能・効果で米国で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽エベレンゾ錠20mg、同錠50mg、同錠100mg(ロキサデュスタット、アステラス製薬):「腎性貧血」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2027年9月19日まで)。
HIF-PHD阻害薬と呼称するファースト・イン・クラス薬。現在の適応は「透析施行中の腎性貧血」だが、今回、「透析施行中の」との文言を削除し、保存期の腎性貧血にも使えるようにする。
HIF-PHD阻害薬は同剤のほかにバフセオ錠(バダデュスタット)、ダーブロック錠(ダプロデュスタット)、エナロイ錠(エナロデュスタット)の計4剤が承認されているが、エベレンゾ以外の3剤は透析期と保存期の両方の適応をもっている。今回エベレンゾも他3剤と同様の適応となる。
海外では20年8月現在、腎性貧血に対する効能・効果で中国で承認されている。