薬食審 10月30日に第二部会 9品目を審議 抗インフル薬ゾフルーザの予防適応など
公開日時 2020/10/19 04:52
厚生労働省は10月16日、新薬の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第二部会を30日にウェブ会議で開催すると発表した。9品目を審議する予定。この中には、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル、塩野義製薬)にインフルエンザの予防投与を追加することのほか、新有効成分含有医薬品として、▽遺伝性血管性浮腫治療薬オラデオカプセル(ベロトラルスタット塩酸塩、オーファンパシフィック)▽慢性リンパ性白血病治療薬カルケンスカプセル(アカラブルチニブ、アストラゼネカ)――の2品目がある。オラデオは先駆け審査指定品目。
報告品目は6品目の予定。この中に、がん免疫療法薬の抗PD-1抗体オプジーボ点滴静注(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品)と抗CTLA-4抗体ヤーボイ点滴静注液(イピリムマブ(遺伝子組換え)、ブリストル・マイヤーズスクイブ)との併用で、非小細胞肺がんのファーストラインで使えるようにすることが含まれる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ゾフルーザ錠20mg、同顆粒2%分包(バロキサビル マルボキシル、塩野義製薬):「インフルエンザウイルス感染症の予防投与」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬で、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する。1回の経口投与で治療が完結する。予防投与に関する臨床試験も1回投与で実施した。
治療目的での使用にあたり、顆粒剤は現在20kg未満の小児に投与できない。このため塩野義は、適応外使用のリスクがあるとして、顆粒剤をまだ発売していない。今回の予防投与の追加にあたり、錠剤と顆粒剤で体重についてどのような整理をするか注目される。
▽ラスビック点滴静注キット150mg(ラスクフロキサシン塩酸塩、杏林製薬):「肺炎、肺腫瘍、慢性呼吸器病変」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
キノロン系合成抗菌薬。現在、錠剤が承認されており、今回は点滴静注製剤を追加する。
▽テリルジー200エリプタ30吸入用、同200エリプタ14吸入用、同100エリプタ30吸入用、同100エリプタ14吸入用(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩、グラクソ・スミスクライン):「気管支喘息」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
汎用されている吸入ステロイド(ICS)、長時間作用性吸入抗コリン剤(LAMA)、長時間作用性吸入β2刺激剤(LABA)による3成分配合の吸入薬。現在は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されている。
▽ルミセフ皮下注210mgシリンジ(ブロダルマブ(遺伝子組換え)、協和キリン):「強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」を対象疾患とする新効能医薬品。
ヒト型抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体製剤。現在は既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応を持つ。体軸性脊椎関節炎は、主に仙腸関節や脊椎・四肢の腱付着部に原因不明の慢性炎症をきたす進行性の自己免疫疾患。強直性脊椎炎とX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎に大別される。
▽オラデオカプセル150mg(ベロトラルスタット塩酸塩、オーファンパシフィック):「遺伝性血管性浮腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定品目。希少疾病用医薬品。
血漿カリクレイン阻害薬。開発コードは「BCX7353」。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、補体第1成分阻害因子の欠損によりブラジキニンが過剰に産出されて発症する遺伝性疾患。同剤は、ブラジキニン産生酵素を特異的に阻害することで、HAEの急性発作を予防することが期待される。鳥居薬品が国内の独占的販売権を持っている。
▽ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.4mL、同80mgシリンジ0.8mL、同40mgペン0.4mL、同80mgペン0.8mL(アダリムマブ(遺伝子組換え)、アッヴィ):「壊疽性膿皮症」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
抗TNFαモノクローナル抗体。壊疽性膿皮症の適応を有する製品はなく、承認されれば世界初の治療薬となる。
壊疽性膿皮症は、発症後急速に進行する炎症性疾患。最も多い潰瘍型では、下腿にできた発疹が時間の経過とともに膿瘍を形成し、皮膚組織が欠損する潰瘍化に至り遠心性に拡大する。潰瘍とともに疼痛を伴い、患者のQOLを低下することが懸念される。再発を繰り返すことが多く、潰瘍が治癒した後も長期通院や治療継続が必要になる。
▽カルケンスカプセル100mg(アカラブルチニブ、アストラゼネカ):「慢性リンパ性白血病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。BTKに共有結合することでその阻害作用を発揮する。BTKシグナルはB細胞の増殖、輸送、走化、接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすことが知られている。
▽ビラフトビカプセル50mg、同75mg(エンコラフェニブ、小野薬品):「結腸・直腸がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
▽メクトビ錠15mg(ビニメチニブ、小野薬品):「結腸・直腸がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
ビラフトビはBRAF阻害薬。メクトビはMEK阻害薬。今回、BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な結腸・直腸がんに対して、両剤に抗ヒトEGFRモノクローナル抗体のセツキシマブを含む3剤併用療法を追加する。現在はBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫に対する併用療法で承認されている。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ゼローダ錠300(カペシタビン、中外製薬):「乳がん、結腸・直腸がん」を対象疾患に、他剤との併用を追加する新用量医薬品。公知申請。
▽サイラムザ点滴静注液100mg、同500mg(ラムシルマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「胃がん、結腸・直腸がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん」を対象疾患とする新用量医薬品。
ヒト型抗VEGFR-2モノクローナル抗体。現在60分かけて点滴投与しているが、今回30分で投与することを可能にする。また、非小細胞肺がんの適応について、EGFR-TKIとの併用を追加する。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同240mg、同120mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「非小細胞肺がん」を対象疾患とする新用量医薬品。
がん免疫療法薬でヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。作用機序の異なる免疫療法薬の抗CTLA-4抗体ヤーボイとの併用で、非小細胞肺がんの1次治療の用法を追加する。
▽ヤーボイ点滴静注液50mg(イピリムマブ(遺伝子組換え)、ブリストル・マイヤーズスクイブ):「非小細胞肺がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
がん免疫療法薬でヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体。作用機序の異なる免疫療法薬の抗PD-1抗体オプジーボとの併用で、非小細胞肺がんの1次治療に使えるようにする。
▽ダラザレックス点滴静注100mg、同400mg(ダラツムマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「多発性骨髄腫」を対象疾患とする新用量医薬品。
ヒト型抗CD38モノクローナル抗体。現在、初回投与時に16mg/kgを投与するが、投与時間が長いとの課題があった。そこで今回、初回投与を1日目と2日目に分け、いずれも8mg/kgを投与する分割投与を追加する。
▽カボメティクス錠20mg、同60mg(カボザンチニブリンゴ酸塩、武田薬品):「肝細胞がん」を対象疾患とする新効能医薬品。
AXL/MET/VEGFRキナーゼ阻害薬。VEGFR2などを介したシグナル伝達分子(細胞外シグナル調節キナーゼ等)のリン酸化を阻害することで、腫瘍血管新生及び腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。現在は腎細胞がんで承認されている。