PhRMA・カフォリオ会長 毎年改定から革新的新薬除外を 特許切れ品は支持 アウトカムでValue評価
公開日時 2020/10/12 04:51
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジョバンニ・カフォリオ会長(ブリストル・マイヤーズスクイブ取締役会会長兼CEO)は10月9日、オンライン記者会見に臨み、2021年度に実施予定の毎年薬価改定(薬価中間年改定)の対象範囲から革新的新薬を除外するよう求めた。逆に「特許切れ医薬品を対象とすることは支持する」とした。カフォリオ会長はまた、「新型コロナの教訓から日本の医療システム全体をリセットする機会を与えられた」と指摘。「医薬品の価値(value)評価するためには、正しい治療アウトカムデータを使わなければならない。革新的新薬の一部は医療費削減に大きく貢献した。デジタルを活用し、医療システム全体に対する医薬品のインパクトを包括的に評価できる仕組みの検討」を求めた。
会見に臨んだカフォリオ会長は、新薬創出加算制度導入後の研究開発投資が22%増加(2009年~15年)したと説明した一方で、財政主導の薬剤費抑制策が強まった16年以降はマイナス4%成長に転じていると強調。「この数年間の日本の医療改革は短期的なコスト削減にフォーカスした結果、薬価算定と償還に関わる環境は大幅に悪化した」と指摘した。その上で、直近5年間の医療費抑制の75%が薬剤費の抑制で賄われていたことをあげながら、「大幅な節約を医療システムの一部で得るのは持続可能ではない」と政府の対応を批判した。
◎新型コロナの教訓「医療システム全体をリセットする機会を与えられた」
一方で、今回の新型コロナのパンデミックの教訓から「制度全体をリセットする機会を与えられたと思う。包括的に全体像を見る機会を与えられた」と述べ、「包括的でかつ長期的な視点で制度改革に貢献しなければならない。そしてコストに寄与している要因が本当に何なのかを特定しなければならない」と述べた。また、菅政権が推進する毎年薬価改定(薬価中間年改定)については、「特許切れ医薬品について(毎年薬価改定を)行いたいという望みは支持する。しかし、その節約コストについては、さらにイノベーションを推進するために再投資すべきだと思う」と強調。一方で「どんなルールであっても革新的新薬を毎年薬価改定の対象とすることは修復可能な悪影響を日本のイノベーション環境に与えると思う。(研究開発投資などを)さらに日本の優先順位を引き下げることになる」と述べ、政府部内の議論の行方を強く牽制した。
◎Value Pricingは包括的なアプローチ・手法が必要 疾患のトータルコストから
カフォリオ会長は、医薬品の価値評価について、「バリュープライシング(Value Pricing)というのは包括的なアプローチ・手法が必要だ」と指摘。「医薬品のインパクトは医療システム全体におけるコスト節減の全体像で考えることが必要だ。革新的新薬のおかげで入院せずに日常生活を送ることができるといった重要な価値を評価することが重要」と強調した。さらにデジタル革新は「疾病全体のコストを計算する上で非常に重要だ」と述べ、「それにより医薬品の有効性、安全性のみならず、コスト評価、費用対効果も評価できる。やはり疾患のトータルコストを理解することから始めなければならない」との見解を示した。
◎アウトカム全体を評価できる共通データベース構築を
PhRMA在日執行委員会のクリス・フウリガン委員長は、「アウトカム全体を評価できる共通のデータベースがまず必要だ。ここを議論することが重要だと思う。これによりシステム全体として効率的、効果的な医療制度が確立される」と強調した。