ミクス緊急調査 在宅勤務の長期化で迫られるメンタルケア デジタル活用でＭＲ研修も
公開日時 2020/05/08 04:53
ミクス編集部はこのほど、新型コロナウイルスの感染拡大で政府が「緊急事態宣言」を発出した４月７日以降の企業活動について緊急アンケートを実施した。製薬企業50社の回答から浮かび上がるのは、社員・家族の安全確保と、製薬企業の使命である医薬品の安定供給や情報伝達の継続性に取り組む各社の姿だ。ただ、医師との面談が叶わないＭＲや、デジタルのツールの活用で悩む本社スタッフ、さらには在宅勤務の長期化で社員のメンタルケアの対応を迫られる状況など、これまで経験したことの無い日常への不安やストレスなどを垣間見る結果となった。（調査データはこちら ミクスOnline会員限定）
緊急アンケート調査は、製薬企業83社に調査票を送付し、50社から回答を得た。内訳は、先発メーカー44社、ジェネリックメーカー６社で、調査期間は４月10日～13日。ＭＲ活動についての回答では、「ＭＲは医療機関の求めに応じて訪問可能とする」が最も高く34社（68%）が選択した。次に「ＭＲは必要があれば、医療機関の訪問可能」が29社（58%）となった。この結果からＭＲ活動は、医師など医療者から要請があった場合という、いわばPull型（プル型）対応を７割の企業が選択していることが分かる。安全性情報や製品回収など、企業側から発出することが求められる案件については、６割の企業が対応できるよう準備していた。
一方、社員の安全を守るための管理手法については、「日々の行動について社員から上長に報告し、上長が管理する」が21社（42%）、「出勤時は上長の決裁が必要」が17社（34%）となっていた。また、「社員の日々の行動についてデジタルツールを活用して管理」している企業が14社（28％）となった。
◎見えてきた課題とは
先の見通しが立たないなかで、企業活動をいかに維持していくか――。回答を寄せた30社のコメントを分類したところ、目立ったのは、在宅勤務に即したシステム整備などの課題だ。日本化薬は、「在宅勤務の急増に伴い、モバイルパソコン等の通信インフラに障害が生じたため、通信時間を社内で制限する等の対処を行っている」と回答した。小野薬品も、「ＩＴ利用が集中して通信混雑が生じた」とし、在宅勤務の社員に対し、混雑時の高負荷利用の回避などの対応を呼びかけた。社内業務が必要な部署への対応では、「経理処理など出社が必要なケースについて、一時的に電子ベースでの処理を可能としたほか、受付時間短縮や時差出勤などを行っている」（協和キリン）、「システム改良を行うことで、在宅勤務できる体制を迅速に整備している」（ノボ・ノルディスク）――などの回答があった。
◎メンタルケア重視する企業も
従業員の精神面でのケアを課題に挙げる企業も目立った。大日本住友製薬は、「自宅での勤務を徹底しているため、社員同士のコミュニケーションの機会は激減し、特に独身者や単身赴任者の場合、１人で過ごすことのストレスがメンタルに悪影響を及ぼすのではないかとの懸念が生じてきた」と指摘した。同社は対策として、個々の状況について上長と相談をしたうえで、一時的に赴任先を離れ、家族宅で勤務することも考慮しているという。バイエル薬品は、「従業員の疑問や不安を解消することを目的に、従業員と経営層の双方向によるオンラインコミュニケーションの機会を提供している」と回答した。
精神面でのケアをめぐっては、４月入社の新人社員への影響が懸念される。入社式も分散型や、WEB開催が多く、配属先の雰囲気などがわからないまま導入研修に突入しているケースも多い。勤務地への配属に際しては、先輩社員がこれまで以上に新入社員に目を向け、相談しやすい雰囲気を醸成するなどの対応が求められそうだ。
◎この機会に自己学習で力を
一方こうした機会に、自己学習やスキルアップに注力する企業もある。キッセイ薬品は、「Webミーティングの実施や自己学習コンテンツを提供している」と回答。大鵬薬品は、ＭＲのモチベーション維持のため、「Webセミナーを実施している」とコメントした。セミナーでは、社員の成功事例など週単位にプログラムを組み、ＭＲへ配信することで、スキルアップを図っているという。バイオジェン・ジャパンは、「対面のみの面談がウェブ会議システムで可能になった」とする反面、各社ごと異なるシステムを使うことで、医療者側が煩雑に感じていると指摘。「関係が構築できていない場合は対話が難しくなった」という新たな課題がみえたと回答した。