第一三共 米国でHER2陽性乳がん用薬エンハーツ発売 薬剤費は1か月あたり約145万円
公開日時 2020/01/08 04:52
第一三共は1月7日、HER2陽性乳がんの3次治療に用いる抗HER2抗体薬物複合体(ADC)のエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、開発コード:DS-8201)を米国で発売したと発表した。メーカー出荷価格(卸購入価格)は1バイアル100mgで2295ドル97セント。同社によると、米国で平均的な体重の患者の1か月あたりの薬剤費は1万3265ドルになるとしている。1ドルを110円換算すると、約145万円となる。
米国ではアストラゼネカと共同で情報提供・収集活動を行う。
日本では2019年9月に承認申請しており、20年の承認取得を目指している。同社の眞鍋淳社長は同剤について、「当社創業以来の製品規模になる可能性が十分にある」と話しており、大型化への期待が大きい。
■基本的に3週間に1回投与
米国で同剤は、「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として、19年12月20日に承認を取得した。用法・用量は基本的に3週間に1回、1kgあたり5.4mgを投与する。体重60kgの患者の場合、4バイアル必要となり、1回の治療における薬剤費は約9183ドル(約101万円)となる。
なお、今回の米国承認は条件付き承認で、HER2陽性の再発・転移性乳がんを対象としたフェーズ3試験での臨床的有用性の検証が必要となる。
HER2陽性の再発・転移性乳がんではトラスツズマブなどの抗HER2療法が標準治療で、病勢進行した患者に対しては別のADCのカドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1))が使われる。エンハーツは、T-DM1投与でも進行した患者を対象とした日米欧アジアでのグローバルフェーズ2試験「DESTINY-Breast01」で、主要評価項目の客観的奏効率は60.9%を示した。
ADCは抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身暴露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めている。