キョーリン製薬HD・荻原次期社長 販売面強化で定期訪問の“頻度”引上げ
公開日時 2019/05/15 03:50
キョーリン製薬ホールディングス(HD)の次期社長に内定している荻原豊常務取締役は5月14日、東京で開いた2019年3月期(18年度)の決算説明会で、会社を成長軌道にのせることが求められているとの認識を示した。その上で、イノベーションの成功確率とスピードを上げるとともに、販売面では定期訪問の頻度を上げる取り組みを進める考えを示した。荻原氏は6月の定期株主総会とその後の取締役会を経て正式に社長に就任する予定。
ピーク時に400億円以上を売り上げた気管支喘息治療薬キプレスに16年度、後発品が参入した。このキプレスのパテントクリフで減収減益が続いていたが、18年度は3期ぶりに増収増益に転じた(決算の詳細記事は、
こちら)。
穂川稔社長は説明会で、19年度を最終年度とする4か年の現中期経営計画の期間中は、「キプレスのパテントクリフからどう脱却するかという守りの経営だった」と振り返った上で、20年度以降の新たな中期経営計画では「攻めに打って出ることになる」と語った。そして、「攻めの経営に転じるとき、局面が変わるときは若く新しい体制でのぞむのがベストと考えた」と述べ、今回のトップ交代に至ったと説明した。荻原新社長のもとで次期中期計画を策定、実行していくことになる。
攻めの経営について荻原氏は、新薬メーカーとしての一丁目一番地は“創る”ことと“販売する”ことだとした。このうち販売面については、「社会貢献という意味合いを含めて貢献していくことと、いわゆる“頻度”を上げることを中心に取り組みたい」と語った。
同社では呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科の重点領域で毎月、医師を定期訪問する活動をしているが、どの程度の頻度とするのかなど詳細は新中期計画の中で明らかにするとしている。
■フルティフォーム、デザレックス、ベオーバ、新規抗菌薬を「成長戦略品」に位置付け
同社は19年度の事業戦略推進のポイントとして、「成長力を育成し、成長軌道を獲得する」を掲げている。穂川社長は、喘息治療薬フルティフォーム、抗アレルギー薬デザレックス、過活動膀胱治療薬ベオーバ、19年度中の上市を目指す自社創製の経口キノロン系合成抗菌薬KRP-AM1977X――の4製品を「成長戦略品」と位置付けて積極的な投資・販促を行うとした。
これら成長戦略品の売上げが伸びることで原価率が低減され、結果として利益への貢献も期待されるという。同社では19年度に、10月の消費税率引き上げに伴う薬価改定によって20億円程度の減益を見込んでいる。これに対して成長戦略品の伸長などで原価率を抑えると、「売上総利益ベースで、(薬価改定による)20億円程度の減益を吸収し、逆に20億円弱の粗利増になる見通しを持っている」(穂川社長)と明かした。
19年度の業績計画は5%の増収、1%の営業増益、うち医療用医薬品売上は1%の増収を見込んでいるが、穂川社長は「見た目の数字は(18年度と)大きく変わらないが、次なる成長をねらったものであり、ここ数年とは意味合いが大きく異なる」と指摘した。19年度は攻めの経営の序章になるようだ。
19年度中に日本で承認申請を計画しているのは、▽フルティフォームの小児適応の追加▽キノロン系合成抗菌剤の注射薬KRP-AM1977Y▽間質性膀胱炎治療薬KRP-116D――の3プロジェクト。このうちKRP-116Dは、フェーズ3試験で世界で初めてプラセボに対する優越性を証明しており、近く論文化する。