【World Topics】オバマケアで慢性病患者の負担増
公開日時 2014/03/10 03:50
ロイターが「オバマケア下で新たに医療保険を購入した慢性病患者はほぼ一様に医薬品費の自己負担が増加する見込み」と報じた(2月28日)。ロイターによれば、各州の医療保険販売サイトから保険を購入した慢性病患者は、従来の医療保険に比べて月額平均$8000以上(50%増程度)の医薬品費の自己負担を強いられるようになるだろうという(医療ジャーナリスト 西村由美子)。
オバマケアの下では既往症の有無によって医療保険への加入制限を設けることができなくなった。多くの保険会社は重篤な既往症がある加入者(その多くは高額の医薬品を必要とする慢性病患者)を受け入れるのと同時に、従来の定額自己負担制(Co-Payment)から総額の一定割合の自己負担(Co-Insurance)を課す方式へと保険商品のデザインを変更。これに伴い、従来10~20%であったCo-Insuranceが30%程度に、場合によっては50%以上に引き上げられようとしている。
患者の自己負担の引き上げについて、保険会社は「近年、新薬の価格高騰が著しく、一人年間10万ドル以上の医薬品も珍しくない。慢性病患者を無条件に受入れるには患者の自己負担の引き上げはやむをえない」と説明している。
それでもオバマケアは福音だという慢性病患者もいる。ルイジアナ州在住の45歳の白血病患者の男性は、これまで月々$1万3000から$1万9000の保険料を支払って個人加入の医療保険を購入してきたが、オバマケアの施行で妻の勤務先の医療保険に、はるかに有利な条件で加入することができるようになった。
だが、同じ白血病患者でも、これまで職場の医療保険に加入できていた女性のケースでは、オバマケア以前には月額$53の保険料で年間$1000程度の自己負担であった(但し消費できる医療費の年間上限が$2万5000)ものが、オバマケアの施行で自己負担額が年間$1500で済むようになったものの、月額保険料は$373と大幅に引き上げられた。
特に高額な医薬品、いわゆるSpecialty Drugを必要とする患者画もっとも深刻である。カリフォルニア、テキサス、フロリダ、ニューヨーク州ではSpecialty DrugのCo-Insuranceはいずれも40~50%以上と高く、Co-Insuranceの低い医療保険を選択すると、保険料の他に年間$6000ドル以上の免責額(Deductible)を自己負担しなければならない。動向が注目される。