アストラゼネカは7月31日、製薬企業から医師らへの資金提供内容を公開する透明性ガイドラインに基づき、2012年度(12年1月~12年12月)に同社が医師らに支払った実績を同社ホームページ上で公開した。支払い総額は約98億円で、12年度売上高2198億円(日本法人決算)の約4.5%だった。この中でMR活動に伴う会食費を含む「接遇等費用」は、これまでの他社の公開額は億単位だが、同社は468万円と少なく、「(接待規制以前から)接待行為は一切行っていないため」(広報部)と説明している。
透明性ガイドラインは、日本製薬工業協会が製薬企業と医療機関などとの経済的関係の透明性を確保する目的で策定したもの。研究費開発費等、学術研究助成費、原稿執筆料等、情報提供関連費、その他の費用――の大きく5項目で構成され、会員企業に対して、12年度支払い分を13年度に情報公開するよう求めている。
支払総額の過半は「研究費開発費等」で計約58億円。その8割は治験などの臨床試験費が占める。そのほかは委託研究費、製品の市販後に薬事法に基づいて行う製造販売後調査費がそれぞれ3億円強だった。
「学術研究助成費」は計約11億円。大学の教室や講座などに対する研究振興や研究助成目的の奨学寄付金が半分を占める。寄付先の個別の大学の教室名、一般寄付金、学会寄附金、学会共催費(ランチョンセミナー、特別講演費等)の支出先の学会、団体名については、個別の支出額とともにホームページで公開している。
「原稿執筆料等」は計6億円弱(5694名)。この9割近くの約5億円を、自社製品や医学・薬学に関する講演の講師謝金が占める。原稿執筆料・監修料、コンサルティング等業務委託費を含め、ホームページでは支払った先の医師名と所属施設のみを公開している。
企業側の製品説明会の開催費用などからなる「情報提供関連費」は計22億円強。うち講演会費が過半の13億円近くに上る(3147件)。
「接遇等費用」は468万円だった。これまでのファイザー、ノバルティス、サノフィ、武田薬品の公開額は億単位と比べると極めて少ない。同社広報部は「(接待規制以前から)接待行為は一切行っていないため。大部分は慶弔関連の費用」と説明している。
A.研究費開発費等 総額58億1983万5034円
共同研究費 0円
委託研究費 3億5688万5823円
臨床試験費 48億2725万0098円
製造販売後臨床試験費 7682万5546円
副作用・感染症症例報告費 465万8735円
製造販売後調査費 3億4123万8137円
その他研究開発費 2億1297万6695円
B.学術研究助成費 総額11億4738万5907円
奨学寄附金 5億7695万0000円(514件)
一般寄附金 3億5688万7467円(製品の寄附含む 154件)
学会寄附金 8792万7600円(410件)
学会共催費 1億2562万0840円(147件)
C.原稿執筆料等 総額5億8982万5233円(9776件 5694名)
講師謝金 5億1621万0126円(9133件)
原稿執筆料・監修料 2532万3746円(400件)
コンサルティング等業務委託費 4829万1361円(243件)
D.情報提供関連費 総額22億6366万2715円
講演会費 12億9007万1580円(3147件)
説明会費 9億1844万5883円(3万7055件)
医学・薬学関連文献等提供費 5514万5252円(-)
E.その他の費用
接遇等費用 468万6439円