【ISC速報】CATCH CT/CTAが脳卒中ハイリスク群検出でMRIの代替手段となる可能性示す
公開日時 2012/02/03 05:00
CTとCTアンジオグラフィー(CTA)は、一過性脳虚血発作(TIA)やマイナーストローク患者で、脳卒中の発症リスクが高い患者を抽出する上で、MRIの代替手段ともなりうる、有用なツールとなる可能性が示唆された。前向き研究「CATCH(Prospective CT And MRI In The Triage Of TIA And Minor Cerebrovascular Events To Identify High Risk Patients)」の結果から分かった。カナダ・University of CalgaryのShelagh B.Coutts氏が2月1日に開かれたセッションで発表した。(2月1日 米国・ニューオリンズ発 望月 英梨)
TIAとマイナーストロークは、脳卒中再発のハイリスク群で、50%が48時間以内に発症するとされている。治療に際し、タイミングが重要視されることから、検査の早期実施が望まれるところだ。脳卒中の再発リスクを検討する上で、MRIの有用性が指摘されているが、緊急時に検査できない施設も少なくないのが現状だ。このような中で、多くの患者がCTは撮影されている。このような中で、試験は、CTやCTAで、早期にハイリスク群を検出することができないか検討する目的で実施された。
対象は、連続的にマイナーストロークを発症する患者(脳卒中重症度評価スケールNIHSS<4)と、救急外来を訪れ、神経内科医が24時間以上の発症を疑ったハイリスクのTIA患者。ベースライン時の日常生活指標であるmodified Rankin Scale(mRS)が0[全く症状なし]または1[何らかの症状はあるが、障害はない]で、血栓溶解療法を受けていない患者とした。これらの患者を対象に、CT/CTA検査による診断の有用性を検討した。
29カ月間で、510例を登録。82%に当たる420例でMRIを撮影した。98%の患者を追跡した。
その結果、CT/CTA陽性は34%(171例)、拡散強調画像(DWI)陽性は58%、NIHSS(中央値)は1だった。また、発症から撮影までの時間は、CT/CTAが5.5時間(中央値)、MRIが17.5時間(中央値)だった。
90日後のイベント再発は7.1%(36例、[95%CI:5.0-9.6])で、進行は19例、再発は17例だった。イベントを発症するまでの時間(中央値)は1日(IQR:7.5)だった。
この結果から、脳卒中の発症予測因子として、▽救急外来での症状の進行(ハザード比:2.2、[95%CI:1.02-4.9])▽CT/CTA(ハザード比:4.0、[95%CI:2.0-8.5])▽DWI陽性(ハザード比:2.2[95%CI:1.05-4.7])――が浮かび上がってきた。
多変数解析を行うと、CT/CTAのみが、脳卒中発症の予測因子だった。診断の正確性を検討する目的で、CT/CTAとDWI陽性を比較したところ、感度はCT/CTAが67%[49-81]、DWIが75%[57-88]、特異度がCT/CTAで68%[64-72,316]、DWIが43%[34-48,201/463]だった。真に陽性である確率(PPV)は、CT/CTAが14%[9-20、24/171]、DWIが9%[6-13、27/289]、真に陰性である確率(NPV)はCT/CTAが96%[94-98,316/328]、DWIが96%[92-98,201/210]だった。二次分析を行うと、CT/CTAとMRIの間に脳卒中の再発予測において、有意差は認められなかった(0.67[95%CI:0.59-0.76 vs 0.59[95%CI:0.52‐0.67]、p=0.09]。
これらの結果から、Coutts氏は、「CT/CTAは、TIAやマイナーストロークの発症からかなり早い段階で完了でき、再発や身体障害などのアウトカムを予測することができる」と指摘。「MRIは、虚血に対する素晴らしい感度がある」とした上で、「緊急時にMRIに早急なアクセスできない施設では、TIAとマイナーストローク患者のリスクを層別化する上で、CT/CTAは、実臨床でMRIの代替手段となる」との見解を示した。
なお、同試験の結果は同日付の「Stroke」に掲載された。