GOLD 2011年改訂版で推奨されている修正MRC息切れスケール（mMRC）とCOPDアセスメントテスト（CAT）のカットオフ値は、患者を分類する上で同 等ではないことが、後追い解析の結果明らかになった。9月1から5日までオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会（ERS）のオーラルセッショ ンで、英GlaxoSmithKline、Respiratory Centre of ExcellenceのL. Adamek氏が3日発表した。この報告は、レイト・ブレイキング・アブストラクトとして取り上げられた。

昨年、2006年版から大きく改定されたGOLD（Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease）2011年改訂版では、「気流制限」に加えて、「症状の重症度」と「増悪リスク」の3つの要素を組み合わせ、COPDを4つに分類（A： 軽症で低増悪リスク、B：重症で低増悪リスク、C：軽症で高増悪リスク、D：重症で高増悪リスク）するよう推奨されている。

症状の重症度は、mMRCまたはCATのどちらかを使って評価し、二つに分類することになっている。その際のカットオフ値はmMRCが≥2、CATは≥10となっているが、この二つの評価方法のカットオフ値が同等であるかどうかについて、物議を呼んでいる。

そこで研究グループは、ヨーロッパ7カ国で実施されたHEED研究の健康関連QOL（HRQL）のデータに、2011年改訂版GOLDの新基準をあてはめ、これらのカットオフ値が同等であるかどうかを検証することにした。
HEED研究は、プライマリケア医で受診するCOPD患者を対象に、健康関連のQOL（HRQL）や症状などについて調べたクロスセクショナル調査であ る。対象被験者は、重症度を問わず6ヶ月以上COPDを患い、2006年版GOLDのスパイロメトリー基準を満たす、喫煙歴10年以上の40~80歳の患 者。 HRQLに関する調査は、St. George呼吸器質問票（SGRQ）とCAT、SF-12健康調査、慢性疾患療法の機能評価（FACIT）疲労スケールを用い、同研究では、これらに加 えて、医師が報告した症状（咳、喀痰、呼吸困難）と患者報告による過去6ヶ月間の増悪、mMRCを調べていた。

解析の対象となったのは1817例。これらのデータをもとに、被験者をmMRCで評価した場合と、CAT で評価した場合の二通りの分類をシミュレーションし、同じグループに分類された患者の臨床的特徴や健康状態が、二つの評価方法の間で一致するかどうかを検討した。

その結果、性別や年齢、罹患期間、喫煙歴などの患者背景では、二つの評価方法は同等だったが、臨床的特徴は、評価方法で一致しない項目が見られた。医者が 報告した咳の割合は、mMRCによってグループAに分類された患者では62%だったのに対し、CATでAに分類された患者では50%、グループCでは、そ れぞれ77%と66%で同様に差が見られた。呼吸困難の割合も両評価方法で一致せず、グループAはmMRCが49%に対しCATは37%、グループBはそ れぞれ63%と86%、グループCはそれぞれ63%と52%、グループDは94%と82%であった。
SGRQとSF-12、FACITにおいても、同じ分類の二つの評価方法の間でスコアに差があることがわかった。
またmMRCでは、軽症とされる≥2の患者が57.2%に上ったのに対し、CATで軽症とされる≥10の患者はわずか17.2%に留まっており、両評価方法の一致係数は0.626と低い数値を示した。

これらの結果からAdamek氏は、2011年改訂版GOLDの新基準で設定されているmMRCとCATのカットオフ値では、患者が同等に分類されておら ず、mMRCのカットオフ値を≥2とすると、多くの患者を軽症に分類する傾向があると指摘した。その上で、将来的にmMRCのカットオフ値は変更する必要 があるかも知れないと結論した。