経理は細かく、営業は大雑把、技術者は真面目で、経営企画は分析好き。仕事と性格の相関関係はいろいろだ。

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中小のコンサルティングA社は中業績好調のため人員不足となり、ここ数年、営業部門で採用を進めてきた。最近の採用では、有名大学出身者や大手からの転職者も増え、人事は自社の採用力にかなりの自信を持つようになっていたのだが、経理の欠員補充をしようとしたところ、なかなか良い人が見つからない。応募してくる人は多いのだが、面接で「これは」と思う人に逃げられてしまうのである。

「営業では良い人材が採れているのに、どうしてなのでしょう？」
A社から相談を受けた我々は、話をきいて簡単なアドバイスをしただけだったが、次の内定者は喜んでA社への入社を受け入れてくれた。

A社が経理の採用でうまくいかずにいたのは、営業の採用がうまくいっていたことが原因だった。と書くと、何を言っているのかと分からなくなってしまうが、営業でうまくいっていたために、そのままのやり方を経理に当てはめてしまったのである。

営業の採用では、評価の高い応募者に社長（役員）が野心に溢れた事業展望を語って聞かせ、シニアマネージャーが仕事の面白さを熱弁、活気あるオフィスを見せ、ぜひA社に来て欲しいと口説いていたが、このやり方は経理にはあまり響かない。いや響かないどころか、未来予測について大風呂敷を広げる会社、言葉巧みに説得してくる企業は「胡散臭い」と敬遠すらされてしまいがちだ。

職業柄、経理スタッフが好むのは堅い会社、それも数字に裏打ちされた堅い会社である。多くの企業で採用セミナーのお手伝いをしてきた我々の経験でも、経理の人たちは用意された会社資料を実によく読み込んでいる。逆に営業やエンジニアは、資料はせいぜい斜め読みにするくらいで、そのへんの放っておき、もっぱら講演者の話に集中する。

こうした職種による転職者のこだわりの違いは、他にも多々ある。

機械メーカーの生産管理Nさん（34歳）は自分のことを「大雑把な性格なんですよ」と言っていたので、そういうところがあるのかと思っていたのだが、転職活動がはじまると、大雑把なんてとんでもない、時間厳守は当然のこと、連絡はマメにあるし、面接になった企業には合否に関わらず礼状を送るなど、たいへんきめ細かい対応をする方だった。

しかし、本人にそのことを誉めると
「転職なので、いつもより丁寧にしないといけないなと思っているだけですよ。会社（現職）では、がさつな男で通ってますし、謙遜したつもりはありません」
と、笑っている。やはり老舗メーカーというのは、慇懃な企業文化が浸透しているのだなと感心していた我々なのだが、あるとき、Nさんのさらなる本性を見せつけられることになった。

Nさんが面接を受けたとある企業の選考で、合否結果が出るのが約束した日から数日遅れたのだが、その時のNさんの怒り方が尋常ではなかったのだ。
「この日までに選考結果を出すと言ったら、それをキッチリやるのが人事の仕事でしょう？それを、遅れたのにちゃんと謝りもしないなんて。あの会社はいったい何を考えているんですか！」
そう。メーカーの生産管理にとって、納期は絶対に守らなければならないモノ。それを軽い調子で先延ばしにすることなど、彼には考えられないことだったのだ。

総務のUさん（35歳）は住み慣れた地元に戻るための転職、いわゆるUターン転職を希望して、会社を探していた。
しかし、こうした転職の場合、面接のために掛かる交通費がバカにならない。特に、事務系専門職をしているUさんのような場合、それなりの数を応募しないと内定をとるのは難しいので、
「一次面接は無理でも、二次面接以降は会社の方に交通費を負担してもらうよう、各企業にお願いして欲しい」
と、要請があった。

Uさんを二次面接に呼んだ会社のひとつ、B社は交通費を負担することには同意したが、振込は面接後にして欲しいと連絡してきた。
「前例がないことなので、経理の方の承認をとるのに手間取ってしまって…」
B社はそう理由を伝えてきたのだが、これを聞いたUさんはその場でB社の辞退を決めてしまった。
「こういう時に建て替えるくらいの融通ができない会社っていうのは、どうなんでしょう？」というのである。

交通費の支払いなど、後でも先でもそれほどかわりがないとも思えるのだが、総務は社内の目配り気配りが仕事のひとつ。臨機応変の対応が出来ないことに、どうにも納得がいかなかったらしい。

日々、いろいろな転職者の方にお会いしていると、仕事・職種はその人の性格にかなりの影響を及ぼしているように感じる。もちろん「そういう性格だから、その仕事に就いている」という面もあるのだろうが…。
皆さんはご自分の仕事と性格の相関関係、自覚していらっしゃいますか？