国際医療福祉大・重松氏「PADの早期診断にABIの測定が有用」
公開日時 2011/10/27 04:00
少し歩いただけで痛みがでる“間歇性跛行”や、足や手の安静時疼痛、潰瘍、壊死などの症状で知られる末梢の動脈硬化性疾患“PAD(末梢動脈疾患)”。心血管疾患や脳血管疾患の合併率も高く、生命予後が悪いことも知られている。早期診断が求められる中、足首最高血圧と上腕最高血圧の比をとった“ABI”を活用することの有用性が指摘されている。国際医療福祉大学教授の重松宏氏(山王メディカルセンター血管病センター長)が10月26日、サノフィ・アベンティス主催のプレスセミナーで講演する中で、自身の考えを明らかにした。
PADは、発症から5年以内に1/3が死亡し、この原因の75%が、心血管イベントとされている。国際疫学研究「REACH Registry(Reduction of Atherothrombosis for Continued Health)」の結果でも、PADを発症した人の29.7%が心血管疾患(CVD)を、20.6%が脳血管疾患(CAD)を合併している。
そのため重松氏は、動脈硬化を全身病として捉えた「“ATIS(アテローム血栓症)”という包括した概念で、PADの診断・治療を行うことが重要」との考えを示した。その上で、「PADは全身的動脈硬化ATISを診る窓」と述べ、早期診断が重要とした。
早期診断の指標としては、ABI(Ankle Brachial Pressure Index、足首最高血圧/上腕最高血圧)の有用性を強調。ABIの値が低下するにつれ、心血管イベントの発生率が増加するとのエビデンスがあることも紹介した。
さらに、65歳以上の患者では、無症候性であっても、症候性のPADとイベントの発生率で大きな差がみられないことも指摘し、「無症候性PADを診断するためには、血管検診が重要である」とABIの有用性を強調した。
◎“健康に自信”の一般市民でも隠れPAD多く
重松氏は、日本心・血管病予防会が一般市民へのPADの啓発活動の一環として、敬老の日である9月19日にABIの無料測定と医療相談を実施したイベント「Take!ABI2011」を、全国7地区8カ所で実施したことを紹介した。ABIの測定数で、ギネス記録にもチャレンジしているという。
当日は、2525人の測定が行われ、ABIが低値異常(0.9以下)を示したのは2.8%(63例/2286例)、境界域(0.91~0.99)は6.2%(141例/2286例)で、年齢が上昇するにつれ、発生頻度が増加する傾向がみられたとした。東京会場に訪れた895人(男性:402人、女性:493人)のうち、低値異常は1.6%(14例)、境界域は4.2%(38例)だった。なお、狭心症・心筋梗塞または脳梗塞の合併・既往があったのは12.6%(87例)だった。
重松氏は、東京会場での模様からイベントに参加した人のアンケート調査から、「自身の健康に自信を持っていて、それを確認しにやってきた人が多かったのでは」と説明。その上で、自身を健康だと感じている人の中にも、ABIが低値異常を示し、PADと診断された人がいることを指摘し、「我が国の高齢者にはPADを有する者が少なくない」と注意喚起した。
【2011年10月27日17時修正済】