FDA レギュラトリーサイエンス強化を図る
公開日時 2011/09/07 04:00
米食品医薬品局(FDA)は、FDA規制製品(医薬品・医療機器・動物用薬品・化粧品・食品など)の有効性・安全性・品質・機能を確保するために、レギュラトリーサイエンス(RS)研究および応用の強化を図っている。FDAは8月12日、米国立毒性学研究センター(NCTR)およびアーカンソー州政府と「規制科学研究拠点」(Center of Excellence for Regulatory Science:CERS)の設置を合意したと発表した。
CERSは、FDA、NCTR、アーカンソー州所在のアーカンソー州立大学など大学・研究機関などと共同でRSに関する共通テーマの研究やRSについての教育などに人材を提供するバーチャルな研究機関で、実際に研究機関の建物を設立するわけではない。FDAは、製品の安全性重視の観点から毒性研究の中心とされるNCTRとの協力を意図したと見られている。NCTRはアーカンソー州ジェファーソンに位置し、今年創立40周年を迎えた。
FDAは、これに引き続き、8月17日にRS研究および応用の方針および優先順位などを定めた「A Strategic Plan―Advancing Regulatory Science at FDA」を公表、RSを重視することにより、FDA規制製品を消費者が安心して使える環境を醸成する決意を示した。
FDAは、「FDAの責任の中核は、有効性・安全性についての市販前の審査から市販後の製品調査などに至る規制活動に可能な限りベストな科学を応用し消費者を保護することにある」と同局の使命を位置づけ、その過程でのRSの役割に言及している。FDAは今後、重点的にRSの強化を図る分野として、①製品の安全性を担保するために毒性学研究の近代化を図る、②企業の製品開発や患者のアウトカムを改善させるために、臨床評価法やパーソナライズド・メディシンにおけるイノベーション刺激策を講ずる、③生産部門および品質の向上のために新たな施策を支援する、④画期的な新規技術を評価するための準備を整える、⑤患者のアウトカムを向上させるために情報科学を駆使し、各種データを活用する、⑥食品安全に関し、新たに(食中毒などの)予防中心の食品安全システムを構築する、⑦国際的な感染症や核・化学物質などによる脅威から守る各種の医学的対策を推進する、⑧消費者や専門家が規制製品に関する何らかの決定ができるように社会的行動科学の研究を強化する‐を上げた。
FDAが、RSを重視する背景には、医薬品では、全米で無数の訴訟問題となったVioxxの副作用問題や中国からの輸入血液製剤の汚染問題はじめ相次ぐ医薬品事故や食品ではBSE問題、野菜・缶ジュースなどの細菌汚染問題など社会問題が相次ぎ、規制当局であるFDAに対する批判が高まったことが考えられる。