企業主催の講演会 治療方針メイン・懇親会なし・小規模なら医師の9割容認
公開日時 2011/06/20 04:00
エムスリーとシノベイトヘルスケアはこのほど、「東日本大震災による医療活動の変化に関する調査」をまとめた。この中で製薬企業主催の講演会や研究会(以下、講演会)の適切な実施時期を聞いたところ、講演会の形式で回答が分かれ、「薬剤のプロモーションでなく、治療方針などの講演会」「講演会後に懇親会などを行わない形式」「数十人規模の小規模な講演会」であれば6月現在のいま、医師の9割近くが開催して差し支えないとの考えを示した。一方、「新薬記念発売など大規模な講演会」は今でも、4人に1人の医師が自粛を望んでいることもわかった。
調査は震災発生の約1か月後にあたる4月14~19日に実施した。回答医師数は3016人。調査結果は30万円で販売するが、その収益はすべて被災した子どもを支援する団体に寄付する。
講演会の適切な実施時期を聞いたところ、「治療方針などの講演会」「懇親会などを行わない形式」「小規模講演会」であれば、「今すぐでも問題ない」(=4月)との回答が7~8割となり、「1か月後なら」(=5月頃)と「2~3か月後なら」(=6月頃)を加えると9割近くにのぼった。震災後に講演会などを自粛する企業が相次いだが、最新治療を待つ患者もいたことから、形式を考えて開催してほしかったと考える医師が多いことが浮き彫りになった。
「今すぐでも問題ない」(=4月)との回答を地域別にみると、被災地から離れるほど「問題ない」との回答割合が高い傾向も見られた。
一方、「薬剤のプロモーションがメインの内容の講演会」や「講演会後に懇親会などを含めて今まで通り行う形式」では6月現在の今でも、5人に1人が自粛を望んでいる状況も見て取れた。
◎震災後の対応で印象良かった企業 武田薬品がトップ 大塚や協和キリンも好印象
震災後の製薬各社の活動状況を聞いたところ、調査時点の4月でMR活動が減ったと感じた医師は71%。地域別にみると、「減った」との回答は、被災地の5県(青森、岩手、宮城、福島、茨城)で95%、被災地隣接地域の1都9県(秋田、山形、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、新潟)で84%、その他地域で63%――だった。
これに対して医師の9割以上は「MR活動を積極的に行うべき」「これまで同様に展開すべき」と考えており、地域差もなかった。当時の製薬企業の対応と医師のニーズにズレが生じていたようだ。
震災後の対応で印象が良かった企業・悪かった企業を聞いたところ、印象が良いとの回答が最も多かったのは武田薬品(下表)で、迅速で的確なチラーヂンの供給情報や情報提供のタイミングの良さ、また、不足器具や薬品のチェックをしてくれたことなどを評価するコメントが寄せられた。また、大塚製薬や協和発酵キリンは良い印象ばかりで、印象が悪いと回答した医師が少なかったという。全体的に、印象の良し悪しはMR個人によるものが大きかったようだ。
■震災後の対応で印象の良かった企業 |
会社名 |
回答医師数 |
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武田薬品 |
61 |
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ツムラ |
34 |
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第一三共 |
31 |
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大塚製薬 |
31 |
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協和発酵キリン |
30 |
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ファイザー |
27 |
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あすか製薬 |
24 |
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日本イーライリリー |
21 |
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中外製薬 |
20 |
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アステラス製薬 |
20 |
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ノバルティス ファーマ |
20 |
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回答数が20人以上の企業のみ抜粋 |
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なお、良い印象を受けた理由を抜粋すると、▽原発問題があるのに女性MRが供給不足の薬剤について積極的な情報提供をしてくれた(福島)▽水、ガスボンベ、食料など一番困ったときに持ってきてくれた。極めて早期で助かった(茨城)▽数個なら弁当を届けられるとのメールでの申し出に、無理だろうと思いながら、泊まり込みの院内スタッフ数の面から数十人分なら欲しいと返信したところ、MR生命にかけて調達すると言ってくれた(岩手)▽自粛は投与希望の患者にとって迷惑な話。こんな時でも変わらない情報提供をしてくれた(三重)▽工場被害による生産中止の報告をいち早くくれた。当面の対策も的確に知らせてくれた(山梨)――などがみられた。多くの医師で、「迅速な情報提供」や「いつもと変わらない情報提供」が良い印象につながったようだ。
悪い印象を受けた理由では、▽東北支社を閉鎖してMRや社員が引き上げ、薬剤供給を卸の自主性のみとした(福島)▽訪問の自粛。なぜ自粛する必要があるのか意味がわからない(群馬)▽地震影響が全くない関西地区での講演会の中止や延期。患者さんのためでなく世間体ばかり気にした過剰な自粛に違和感を覚えた(大阪)――など。過剰な活動自粛や訪問のないMRに悪い印象を持ったようだ。