若き志はどこへ
公開日時 2011/03/24 04:00
外資ブームの頃、コンサルティングファームに入社したエリートたち。彼らのその後はどうなっているのだろうか?
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近年まで続いていた外資系ブーム。有名コンサルティングファームなどは20代から高給が得られるなどと注目を集めたが、金融危機後は縮小や撤退が相次ぎ、新卒で入社した人達も、いまや転職に迫られるようになっている。
ブームのなか人気企業に入社した彼らは、頭脳明晰かつ英語力の高い人材ばかり。本来なら厳しい経済状況下でも、それなりの需要があっておかしくないはずなのだが、希望にかなう転職はそう簡単ではない。ネックになっているのは、彼らの高い志である…。
Sさん(29歳)は留学後、米国系コンサルティングファームを経て、外資系ネット企業のマーケティング部門でアジアリージョンを担当してきたというキャリアの持ち主。これまで国際的に活躍してきた経験を生かしたいと、我々に熱く語った。
「海外に出て一番感じるのは、不思議と『やはり自分は日本人なんだ』という思いなんですよね。これからもグローバルに活躍していきたいという気持ちはありますが、日本企業、たとえばまだ世界に知られていないメーカーで海外進出のサポートをするような仕事がぜひしたいと思っています」
日本市場の頭打ちから、国際化を進めようとしている会社は少なくない。Sさんのような人材なら、きっと両手を広げて迎えられるに違いないと思われたが、なかなかことはそう簡単に運ばない。
Sさんのような人は、人事・役員の面接では非常に良い印象を持たれるのだが、現場責任者と相対すると、とたんにすれ違いが生まれてしまう。話す内容が、完璧すぎるのだ。
「たしかにSさんの言っていることは正論なんですよ。彼の言う通りにマーケティング主導で開発・製造が進められたら、どんなに良いだろうとは思うんですけど…」
外資系コンサルティングファームで論理的思考能力を磨いてきたSさんには、事業会社のさまざまなしがらみというものが理解できていなかった。あるメーカーの面接で、現場長が
「現実問題として、そのやり方では開発を説得できないでしょうね」
というと、Sさんはこともなげに
「では、それが出来る開発の人材を採用すべき」という趣旨のことを言ったのだ。
実は面接した側も「会社の問題は、開発部にある」と思ってはいたのだが、開発の主メンバーには役員の親族や、取引企業から受け入れたエンジニアが含まれており、おいそれとリプレイスするわけにもいかない複雑な理由があったのだ。
そのあたりの裏事情をほのめかしてみたのだが、普段は飲み込みの早いSさんが、解せないという顔で今度はこう言い放った。
「グローバル市場で戦っていくなら、今までのままのやり方では通用しませんよ」
「理想主義でも良いんですが、事業会社の制約というか、日本社会ならではの会社同士の関係というか、そのあたりの理解がないと…」
頭の回転の速いSさんなので、そうした事情をまるで分からないというわけではない。だが、根回しの大切さや、人事(リプレイス)に対する感覚の隔たりは大きく、結局Sさんは希望している日本のメーカーから内定をもらうことはなかった。
若手のハイキャリアにはSさんと同じように「日本企業をグローバル企業にする手助けがしたい」という志向の人が実は非常に多い。国難とも言える状況下、彼らの思いはよりいっそう高まっているだろう。
かつて人材の流失が叫ばれていたことを思えば、たいへん有り難いことなのだが、元外資系コンサルタントと日本メーカー、両者が折り合える点はなかなか見つからない。仲介する我々も、もどかしい思いを抱えて着地点を探っているところだ。
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