転職分析家
公開日時 2011/02/08 04:00
MBAを取得したマーケティングの専門家Tさんは、転職成功の鍵をさぐろうと分析をはじめた。
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金融会社A社のマーケティング部に勤務するTさん(29歳)は、自らを「分析屋」と称した。大学で計量経済を学び、就職してから会社のプログラムでMBAも取得。
「人間の経済行動には、背後に一定の論理があるものなんです」と語るTさんは、全てにおいて徹底的なリサーチの上に行動をおこすタイプだった。
そのTさんが転職を考えるようになったのは、約1年前のことだ。
「30歳のひとつ手前、29歳の時に転職を考える人が多いという話を聞き、1年間かけてリサーチをしてみることにしました」
なるほど、我々の知るところでも、29歳というのは、就職して1社でずっと頑張ってきた人が、節目の年齢として、その後のキャリアを考える頃合いになっている。
Tさんのように、2年間MBAのための業務を離れていた場合でも、実務経験が5年に達し、選択肢が広がる年齢だ。
その年齢になる1年前から情報収集に入るというのは、さすがに論理思考な人だと我々は感心した。
Tさんはまず、転職関連の本を読みあさった。しかし、どうも納得できる答には巡り会えなかったという。
「だいたい書いてあるのは、会社に帰属して安心するのではなく、自分のキャリアを磨けということ。その通りだと思うんですが、僕にとっては当たり前すぎて…。転職に成否を決める核心部分が何なのか、もっと深いところを探っていこうと思ったんです」
Tさんの次の情報収集は当然ネットだった。転職徒然草にもあたってくれていた。
「このコラムはたくさん読みましたねえ。事例が豊富で、データとして、とても参考になりましたよ」
それから転職関係のいくつかのコミュニティに参加。そこで生の声を聞き、見識を深めていったという。
そしてTさん自身が転職に動く前の最後のステップとして、転職した友人・ネットで知り合った人達と直接会い、ヒアリング調査を行った。
仕事をしながらのことなので、それほどたくさんの人に会ったわけではないが、回数では約10回、人数でも30人近くに会ったという。
こうして、いよいよTさんは我々のところにやってきた。
「目の前の年収や会社の格に惑わされず、キャリアを伸ばしていける転職をしたい」という。立派な心がけである。ただ、それは転職本に書いてあったこと、そのままだ。果たして、分析を得意にするTさんが、1年間のリサーチで得た、転職の背後に潜む、人間の行動論理とは何なのだろう?
我々としては、どうにも気になるところだった。
「それで、リサーチの結果、転職の成否はどこで決まるという結論になったんですか?」
「ああ、それですか…」
Tさんは、少しばかり優越感を含んだ声で言った。
「そうですね、いちおう『私が何を基準に会社選びをするのか』ということと関連してきますから、エージェントさんにはお伝えした方がいいかもしれませんね」
「は、はい。お願いします!」
Tさんは少しばかり間をおいて、こう言った。
「ズバリ、人間関係です」
「に、人間関係?」
「はい。転職で失敗している人達のほとんどは、職場の人間関係でつまずいているんですよ。ですから、私は面接でお会いした職場の人と、良い関係を築けるかどうか、そこをポイントにしたいと思います。ハハハハハハ」
Tさんの高らかな笑いの意味はよく分からなかったが、彼が1年かけて得た結論は、直観で転職を決めている人達と、何らかわらないということは理解できた。
「結局、フィーリングが大切ってことなのかなあ…」
Tさんに聞こえないところで、思わず呟いてしまう我々なのであった。
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