美女と珍獣
公開日時 2010/05/18 04:00
ベンチャーA社で働く女性は、なぜが美女ぞろい。そこに珍獣系のMさんが…。
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法人の育児制度を支援する事業を行っているベンチャー企業A社。そのオフィスに入ると、おそらく多くの人が落ち着かない気持ちになるに違いない。A社で働く30名ほどの男女(特に女性)は、そろいもそろって美男美女ばかりなのだ。
モデルのような高身長・小顔のスタイルの人がいると思えば、目鼻立ちの鼻筋のくっきりした俳優顔のスタッフもいて、A社の職場はまるでドラマの撮影現場のような華やかさなのである。
「A社は素敵な方が多いですよね?みなさん、モデルさんかと思いました。」
外見のことを口にするのは失礼かなと思いつつ、我々は思わず聞いてしまった。
「ありがとうございます。当社には学生時代にモデルをしていた男性社員がいたり、ミスキャンパス準グランプリもいるんですよ」
そう返事をする採用担当者も、ハリウッドセレブ:ジェシカ・アルバの和製版といった顔立ちの女性である。
「どうして、そんな人ばかりが集まったのでしょう?」
「偶然だと思いますよ。今のスタッフは、現メンバーの知り合いか、アルバイトから居心地がよく居着いちゃった人、それからウェブページみて自主応募してきた者も数名…。そんな感じですから」
偶然。そんなわけがあるだろうか。あらためてオフィスのなかを見回しても、その説明には納得しきれない部分があった。
「社長か採用を決定している誰かが容姿を重視するタイプなのでは?」
我々は内心、そう疑いつつ、A社への人材紹介をはじめたのだった。
A社が必要としていたのはプレイングマネージャータイプの財務職。しかし、この職種の求人としては給与が低かった。しかも、A社が「クライアントの多くが大手企業なので、大手企業で働いた経験がある人が好ましい」という条件を付加していたので、これといった候補者はなかなか現れなかった。
キャリアが十分と言える候補者は、大手金融機関→ベンチャー財務の経験を持ち「A社は将来性がある」と言ってくれたMさん(34歳)ただ一人。
だが、彼がA社にフィットするとは考えにくかった。Mさんは自分の個性的な顔・体を上手にコーディネートしている方だったが、あえて表現するならば、どちらかというと珍獣系ルックスの持ち主のように思われた。
ずんぐりむっくりで小柄な体系、短く刈った髪の毛をガチガチに固めて立たせた姿はハリモグラの一種のよう。愛嬌はあっても、モデル系が居並ぶA社の雰囲気とは、イメージ的にどうしてもマッチしないと我々は勝手に不安に思ってしまった。
A社の面接を受けたMさんは、不安的中というべきか、すぐに不採用の連絡をもらうことになった。しかも、その理由がハッキリしない。
美貌の採用担当者も、この件については口が重く「上の方の判断で」とか「当社には合わないような印象」とあいまいなことばかり言うのだ。
「やっぱり容姿で合否をきめているんだ」
キャリアがしっかりしていたMさんなので、我々は失望しつつ、彼が傷つかないように連絡を取り次いだのだった。
だが、それから数日後。A社から「もう1度、Mさんの面接することが出来ないだろうか?」という連絡がきた。
話によると、A社のクライアント企業の財務担当者がA社に入社したいという連絡があり、ほぼ話がまとまっていたのだが、家族の反対で別の企業に転職することになったのだという。Mさんの不採用理由がはっきりしなかったのは、その転職者から「どこにも絶対内密にして欲しい」とクギをさされていたためだった。
再面接になったMさんはトントン拍子に選考を通り、そのまま内定・入社に。
結局、我々が考えていた「容姿採用疑惑」はまったくの濡れ衣だった。そう言えば容姿の整った人ほど、他人の容姿についてはこだわらないという話も聞いたことがある。美男美女をやっかみ、ひどい憶測をした我々は、見た目も心も大惨敗というわけだ。
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