アメリカの医療「半専門職」
公開日時 2013/05/13 05:00
記録的な失業率を更新し続けた不況下のアメリカで、不況にかかわらず右肩上がりに雇用をのばしてきたのが医療分野である。看護助手等のメディカルアシスタントやラボのテクニシャンなど、いわゆる「半専門職」の安定的な雇用の伸びはメディアにも報じられ、弱ったアメリカ経済を牽引している観があった。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
これら医療分野の半専門職は、従来、大学の学位を必要とせず、したがって比較的低学歴層の若齢労働者にとって、新卒で就ける初職でありながら比較的給与水準の高い仕事として歓迎されてきた。そして、この分野の雇用は、現在もなお拡大し続けている。
だが、長引く不況下、これら医療分野の半専門職の人気が高まるにつれ、この分野への高学歴層の参入が目立つようになり、結果、従来は専門学校レベルのトレーニングで十分とされてききたさまざまな職種の採用基準に、大学卒の学歴が要求されるようになって来ている。こうした変化は、栄養士、看護師、準看護師、ラボ・テクノロジスト、医療事務職まで、あらゆる職種に共通だ。採用基準の高学歴化が全国統計等にはっきりしてきたのは2002年あたりであった。
一方、医療技術の進歩の早さ、現代医療の複雑さが、医療現場で働く人々に高いスキルと学習能力を求めるようになっていることも事実である。医療政策に強い影響力をもつ米国のシンクタンクInstitute of Medicineは、2010年に出した報告書の中で、このような医療の高度化の動向にふれ、今後2020年までに看護師はすべて大卒資格を有することがのぞましいと提案している。だが、これは、換言すれば、専門学校あるいは短大レベルの看護学位の看護師たちは10年以内にレイオフされる可能性が出てくるということでもある。半導体あるいは自動車等の製造業を揺るがした産業構造の変化。医療業界も例外ではない。