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薬価への経済評価応用でシンポ 費用対効果証明できれば企業の申請価格認める

公開日時 2011/06/27 04:02

 医療経済評価の政策応用を目的としたシンポジウム「第5回ヘルスアウトカムリサーチ支援事業年会」が6月25日、東京大学で開催された。薬価基準への応用について東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学分野の福田敬准教授は、「新薬について費用対効果が証明できれば、一定の範囲内で企業の申請価格を認める」と提唱。自由価格を前提としたものとして注目された。また新薬創出加算で薬価を猶予する範囲が、市場実勢価格の平均乖離率を前提としていることに触れ、「必ずしも価値に見合ったものとは言えない」とし、費用対効果を前提に、薬価の引き下げ免除や軽減を行う方が望ましいとの見解を示した。


新薬の医療経済評価をめぐっては、1992年から企業の申請資料に経済評価に関する資料の添付を認めているが、「メリットが無い」との理由から近年では資料提出も減少している。一方で、欧州やアジア諸国では近年医療経済評価を加味した薬価算定や保険償還範囲の決定が行われている。日本においても社会保障と税の一体改革で経済評価を活用した評価手法の確立が提案されるなど、関心が高まっている。


◎費用対効果の証明 評価方法や判断基準などで制度設計必要


薬価算定時の経済評価の活用法に言及した福田准教授は、現行薬価制度にある「類似薬効比較方式」や「原価計算方式」の加算要件に経済評価を追加する考え方を提案。それに基づく加算率の割り増しなどがあるとした。しかし、類似薬効や原価計算の区分を廃止するならば、費用対効果が証明された新薬は、その他の価格規制(海外価格参照等)の範囲内で企業の申請価格を認めることも一考と提案した。この考え方はスウェーデンの薬価基準に近く、英国のValue-based pricingと同じコンセプト。製薬企業の価格への裁量が増すほか、全ての医薬品について費用対効果の良い水準で薬価を設定できるなどのメリットがある。ただ、課題も多く、経済評価の方法や費用対効果の判断基準、レビュー時間の遅延、十分評価できる臨床データの量、などを加味した制度設計が求められる。


◎既存薬の薬価改定への応用 費用対効果が前提 ガイダンスや専門組織の設置も


一方、既存薬の薬価改定への経済評価の応用については、▽薬価の引き下げ免除・軽減、▽市販後エビデンスに応じた再算定・薬価引き上げ、▽薬効群ごとの再評価による薬価引き下げ・償還中止―への応用について見解を示した。


特に薬価引き下げの免除については、一定条件下で薬価を維持する「新薬創出加算」にも触れ、加算対象品目の薬価が、「市場実勢価格の乖離率が、全収載品の平均乖離率を超えないというのでは国民の納得は得られないのではないか」と指摘。そのうえで費用対効果の優れた医薬品については、薬価改定時に薬価を猶予するなどの考え方が望ましいとした。


さらに市販後のエビデンスにも着目し、企業側が薬価引き上げを前提とした再算定を要求できる仕組みの導入などを求めた。逆に薬価引き下げについては、薬効群ごとに経済性を含めた再評価を行い、薬価引き下げや償還中止などを検討する。あわせて薬効群ごとの評価を行う専門組織を中医協の下部組織として設置するなどのアイディアも披露した。そのほか臨床医向けの費用対効果に関するガイダンスを作成し、保険給付の範囲などで臨床現場の判断などを委ねる考えを示した。


◎吉田薬剤管理官「企業の言い値は難しい」


シンポジウムに参加した厚労省保険局の吉田易範薬剤管理官は、費用対効果に基づく自由価格の提案については「現在は公的価格を前提としたものであり、言い値というのは難しい」とコメント。保険償還の範囲に経済評価を用いる考え方については、「医療経済的視点だけでは国民の合意を得ることは難しい」との見解を示した。

 

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