米ジェンザイム社の開発パイプライン 大型化への期待
公開日時 2010/10/19 04:00
サノフィ・アベンティスによる敵対的買収で話題を呼んでいる米ジェンザイム社の開発パイプラインで大型化が期待されている、リンパ球や単球上のCD52を標的とするヒト化モノクローナル抗体の多発性硬化症(MS)治療薬・アレムツマブの無作為化盲検第2相試験「CAMMS223」に関する5年間追跡のサブグループ解析結果が14日、スウェーデンのイェーテボリで開催中のヨーロッパ多発性硬化症治療研究委員会第26回年次総会で発表され、アレムツマブ投与を受けた早期再発寛解型多発性硬化症(RRMS)患者の約9割で再発や身体障害の抑制効果が確認できたことが明らかになった。
CAMMS223試験はRRMS患者334人を対象にインターフェロン(IFN)β-1aの皮下投与群とアレムツズマブの静脈内投与群を12ヶ月間実施、その後2年間にわたって追跡調査した。今回のサブグループ解析は、この被験者のうち合計5年間の追跡に同意した患者での結果。
追跡期間中の年間再発率はアレムズマブ群0.11に対してIFNβ-1a群0.35で、身体障害の進行をきたした患者の割合はアレムズマブ群13%に対してIFNβ-1a群38%で、いずれもアレムズマブ投与群で良好な結果を示した。また、神経症状評価尺度(EDSS)のスコアでもアレムズマブ群では改善を示したが、IFNβ-1a群では逆に悪化したという。
ジェンザイムはアレムズマブに関して2012年第2四半期までのFDAの承認取得を目指している。独立系の市場調査グループ「BioMedTracker」は、無事承認が取得できれば、2019年までに年間売上高16億ドルにまで成長すると予測しているほか、一部アナリストではピーク時年間売上高20億ドルと予測する向きもあるなど、希少疾病医薬品としてはかなりの大型化商品との呼び声は高い。
このためサノフィによるジェンザイム買収提案の表面化後、提案買収額に不満を示す一部ジェンザイム株主からは、サノフィがアレムズマブの潜在力を不当に低く評価しているとの指摘も少なくなかった。一説ではサノフィ側はアレムズマブのピーク時年間売上高を7億円程度と見積もっているとの情報もある。こうした影響か、敵対的買収に至る直前に開かれたサノフィとジェンザイムのトップ会談では、サノフィのヴィーバッハーCEOがジェンザイム側にアレムツマブの最新情報の提供を求めたが、ジェンザイム側がこれを拒否したという経緯もある。