大正製薬 三浦選手起用拒否のリポビタンDX広告宣伝巡る訴訟「業界の健全な社会常識に明らかに反する」
公開日時 2023/08/07 04:50
大正製薬は8月4日、「リポビタンDX」の広告宣伝をめぐり広告出演管理会社に提起した訴訟で、裁判所が請求を認めなかったことは「業界の健全な社会常識に明らかに反する」とのコメントを発表した。「リポビタンDX」の広告宣伝に長年起用してきたプロサッカー選手の三浦知良氏を起用しようとしたところ、広告出演管理を行うハットトリック社から、「錠剤」についての規定が契約書になく、広告対象に含まれないとして拒否されたというもの。同時にハットトリック社がサントリーウエルネスの錠剤タイプの健康食品の広告宣伝に三浦選手を出演させることを決定したことから、大正製薬はハットトリック社に対し訴訟を提起していた。
リポビタンD製品の広告宣伝については、大正製薬と広告代理店が直接契約し、当該広告代理店が三浦選手の広告出演管理を行っているハットトリック社と契約する形式がとられてきた。今回の「リポビタンDX」の広告宣伝について大正製薬は、リポビタンシリーズの一環として「錠剤」についても当然に契約上の広告対象になっていると主張している。さらに、同社は競合禁止規定により三浦選手が他社の競合製品の広告に出演することは禁止されているとして、ハットトリック社に対し、訴訟を提起した。ただ、裁判所の判断は、契約書に「錠剤」の文言がないとの形式的な理由で大正製薬の請求を認めなかった。
◎「長年にわたり三浦選手を起用し、広告対象商品のイメージを作り上げてきた」
大正製薬は、裁判所の判断に対し、「スポーツ選手や芸能人を商品の広告宣伝に起用するのは、当該スポーツ選手や芸能人のイメージが広告対象商品の宣伝に資するとの判断からくるところ」と指摘。「疲労回復・栄養補給というリポビタンシリーズの特徴に三浦選手のイメージが合致するとの判断のもと、長年にわたり三浦選手を起用し、同選手とともに広告対象商品のイメージを作り上げてきた」と強調。「裁判所の判断は、業界の健全な社会常識に明らかに反するもの」と主張している。
◎出演者の競合禁止規定「広告起用にかかる業界の慣習を揺るがす事態」と主張
一方、ハットトリック社がサントリーウエルネスの錠剤タイプの健康食品の広告宣伝に三浦選手を出演させる決定したことについても、「当社を含め企業がスポーツ選手や芸能人を商品の広告に起用するにあたっては高額な契約金を支払っている。これは、業界の慣習として、出演者が競合禁止規定に基づき競合する他社製品の広告に出演しないことを当然の前提に、出演者とともに安定的かつ長期的に製品イメージを築き上げることを念頭においてお支払いしているもの」と指摘。「莫大な金額を費やして築き上げたイメージを競合他社に瞬時に奪われるおそれがあることとなり、これまでのように高額な出演料をお支払いすることは難しくなる」と強調し、「その意味で、本件はスポーツ選手や芸能人の広告起用にかかる業界の慣習を揺るがす事態といえる」と主張した。
◎「サントリーウエルネスの行為自体にも問題がある」と批判
さらに、「当社が長年にわたり起用中の三浦選手を自社の競合製品に起用するサントリーウエルネスの行為自体にも問題がある」と批判。「競合する会社間で、同一のスポーツ選手や芸能人を広告宣伝に起用する際には、出演者、広告代理店および広告主が互いに配慮することこそが、業界の発展に寄与し、持続可能とするものであり、企業価値の向上に資するものであると考えている」と主張した。