製薬企業主催の講演会 9割の医師「演者に偏り」感じる 内容・頻度「報酬の有無でかわる」との回答8割
公開日時 2021/10/11 04:51
東京山手メディカルセンターの深田雅之炎症性腸疾患センター長は10月9日、第31回日本医療薬学会年会のシンポジウムで「製薬企業と医師との関係についてのアンケート調査」結果を報告した。調査は同センターの常勤医師に「販売情報提供活動ガイドライン(GL)」施行後の講演会形式による情報共有の満足度や信頼度などをたずねたもの。GL施行の実感に関わらず「9割の医師が講演会の演者に偏りがある」と感じていた。講演会の内容と頻度は「報酬(講演費)の有無によって左右される」と考えていることも分かった。一方で講演会による情報共有は、「実際の処方に影響をほとんど与えていない」との結果も浮かび上がった。
調査は、同センターの常勤医師を対象に、製薬企業による情報提供についての改善度、満足度、講演会やセミナーに対する考え、薬剤選択についての情報信頼度、初めて使用する薬剤の情報ニーズなど14項目について質問した。同センターの常勤医師60人から回答を得た。
製薬企業と医師との関係を「5年前と比較」してもらったところ、「改善している(Yes)」は46.7%、「改善していない(No)」41.6%、「どちらとも言えない」は11.7%だった。製薬企業の情報提供に満足しているかについては、「満足(Yes)」が55%、「満足していない(No)」44%、「どちらとも言えない」が1%だった。
◎企業講演会の演者 6割が「経験あり」 うち7割の医師が販売GLの改善を認識せず
製薬企業から講演会の演者(または座長)を依頼されたことがあるかについては、「ある(Yes)」が60%、「ない(No)」が40%だった。一方で販売情報提供活動GLの改善効果を認識している医師のうち、演者を依頼された医師は4割程度だったのに対し、GLの改善効果を認識していない医師が演者を依頼された割合は7割超に及ぶことも分かった。講演会形式の情報提供について「最適(Yes)」との回答は63.3%、「最適でない(No)」は31.7%、「どちらとも言えない」は5%だった。
◎企業主催の講演会の演者 「偏りある」86.7%
製薬企業主催の講演会の演者について「偏りがある(Yes)」との回答は86.7%、「偏りはない(No)」は10%、「どちらとも言えない」は3.3%だった。講演会の頻度と内容は「講演費がなくても変わらないと思うか」との質問に対しては、「変わる(No)」との回答が80%を占めたのに対し、「変わらない(Yes)」は16.7%、「どちらとも言えない」は3.3%となった。なお、「変わる」と回答した医師の傾向をみると、販売情報提供活動GLによる改善を認識している医師に比べて、改善がないと認識している医師の方が、その傾向が強く出ていた。
◎演者を引き受けた製品を積極的に使うか 「使わない」が70% 経験医師で傾向強く
製薬企業主催の講演会の演者を引き受けたら、「その会社の製品を積極的に使うか」との質問に対しては、「使う(Yes)」との回答は26.7%にとどまり、「使わない(No)」は70%となった。「使わない」と回答した医師のうち、演者経験のある医師の方がその傾向が強いことが分かる。
製薬企業主催の講演会への参加と、自身の診療上使用する薬剤選択についても聞いた。「薬剤の選択は関係ない(Yes)」との回答が86.7%だったのに対し、「関係ある(No)」は10%にとどまった。「どちらとも言えない」は3.3%だった。「MRからの情報提供にバイアスが無いと言えるか」との質問に対しては、「言えない(No)」が95%、「バイアスが無い」との回答は0%で、「どちらとも言えない」が5%だった。一方で「講演会の情報提供にバイアスが無いといえるか」との質問に対しては、「言えない(No)」が96.7%、「バイアスがない」は0%で、「どちらとも言えない」は3.3%だった。
◎深田センター長 7割の医師が情報提供に満足 ただ、情報バイアスが無いとは言えない
深田センター長は調査結果のサマリーとして、「約半数の医師が企業との関係改善を実感していた」と述べ、7割の医師が情報提供に満足していたと報告した。一方で販売情報提供活動GL施行の実感に関わらず、「9割の医師が講演会の演者に偏りを感じていて、報酬によって左右されると考えている」と指摘。講演会の情報共有は実際の処方に影響を殆ど与えていないと分析したほか、講演会、MRからの情報提供のいずれにおいても「内容にバイアスがないと考える医師は皆無だった」と強調した。