厚労省・ベンチャー懇報告書「イノベーションを評価する薬価制度構築を」
公開日時 2016/08/01 03:51
厚生労働省は7月29日、医療のイノベーションを担うベンチャー企業の新興に関する懇談会の報告書をまとめ、塩崎厚労相に手渡した。イノベーションを評価する薬価制度の構築や、PMDAの承認審査・相談料の減免の拡充やオーファン疾患に対する開発助成の増額などを求めた。厚労省内に「ベンチャー等支援戦略室(仮称)」を1年以内に設置し、“オール厚労省”でのベンチャー支援体制を敷くことも盛り込んだ。厚労省は、ベンチャー支援対策強化について、2017年度予算案の概算要求に盛り込む方針。
報告書では、基礎研究から承認、販売、市販後調査、海外展開まで見据えたエコシステムを醸成する制度づくりが必要と指摘。イノベーションを評価する薬価制度として、▽医療系ベンチャーの費用構造を含む実態を調査した上で、その特性に対応した薬価における評価、▽既存の画期性加算で十分に評価できなかったイノベーションの評価、▽革新的な抗体医薬品などに対する研究開発や製造の高コスト化に見合った評価――をあげ、中医協のワーキンググループで検討することなどを提案した。
また、上市後のサポートとして、事業規模の小さい医療系ベンチャーにとって、市販後調査(PMS)は多大な負担になっていると指摘。疾患領域別にクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の3年以内のフォーマット統一を目指すことなど、電子的な臨床データなどを活用したPMSの推進を求めた。また、PMSにかかわる資金面の費用軽減も求めた。
◎厚労省、PMDA、臨床研究中核病院との連携強化を
医療系ベンチャー振興施策の企画・実行・モニタリングを行う組織として、厚労省内にベンチャー等支援戦略室(仮称)を1年以内に設置。あわせてPMDAには、医療系ベンチャーを含めた小規模事業者がもっているシーズの実用化を支援する「小規模事業者シーズ実用化支援室」(仮称)、臨床研究中核病院にベンチャー支援部門を設置し、連携することも求めた。
報告書では、ベンチャー振興に向けて、①規制から育成へ、②慎重からスピードへ、③マクロからミクロへ――をベンチャー振興方策の3つの原則(パラダイムシフト)--を3つの原則(パラダイムシフト)に位置づけた。その上で、①エコシステムを醸成する制度づくり、②エコシステムを構成する人事育成と交流の場づくり、③オール厚労省でのベンチャー支援体制の構築――を3つの柱とした具体的な取り組みを示している。
米国では開発された新薬の半数がベンチャー由来であるなど、医療系ベンチャーが製薬企業のイノベーションのカギを握っている。日本では、大学や研究機関が有するシーズは世界でも高い水準であるものの、企業家が少なく、人材確保が困難であることや、投資などが少なく、資金面での支援も弱いなどの弱みがあり、支援策が求められていた。