トランス脂肪酸には、食品の口当たりを滑らかにし、風味を安定させ、また日持ちをよくするなど数多くの利点があり、そのため、クラッカーやドーナッツ、電子レンジでつくるポップコーンから冷凍のピザまで、アメリカ国民が日常的に口にする食品に、きわめて広範に用いられてきている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
一方で、トランス脂肪酸が心臓病の原因となることも夙に知られてきた。米国CDCの推定によれば、米国では、毎年7000人が脂肪酸に起因する心臓病で死亡、20000人がトランス脂肪酸を原因とした心筋梗塞をおこしているという。
これらを受け、FDAは11月7日「トランス脂肪酸はもはや”安全とは考えにくい”」として、「今後はトランス脂肪酸の食品への使用を禁止していく」との意向を発表した。ちなみに、ニューヨーク州(2006年から)およびカリフォルニア州(2008年から)は、すでに州としてトランス脂肪酸の使用を禁じている。
関連業界への影響の大きさを考慮し、FDAは、今後7年間かけてトランス脂肪酸の完全使用禁止を実施する計画で、まずは発表から60日間を関係者からの陳情期間(Commenting Period)とし、ヒアリングを実施する予定だ。食品製造業者など関係者は新たな潜像設備投資にかかる経費や時間、食材の変更にかかるコスト等を試算して、連邦政府と善後策を検討することになる。
有識者はこぞって、「食品の値上がりは避けられないかもしれないが、トランス脂肪酸の使用禁止は、誰にとってもグッドニュースのはず」とコメントしている。