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塩野義・手代木社長 高額薬剤問題は「これまでの制度の枠組みで測れない」 新たな対話の必要性を強調

公開日時 2016/09/02 03:52

塩野義製薬の手代木功代表取締役社長は本誌が行った座談会(Monthlyミクス9月号掲載)で、経口C型肝炎治療薬など「イノベーションが進み、まったく新しい作用を有する新薬も登場し、これまでの制度の枠組みで測れないものが出てきている」と臨床現場の変化を指摘し、これまでにない新たな視点で産業側と規制当局による議論を早急にもつことの必要性を強調した。また、精神神経科領域など自社の長期収載品を共和薬品に移管することを決めた背景について、「2020年に向け、雇用を保証しつつ、工場の整備・統合を考えると、いまのタイミングが限界だと判断した」と述べ、中長期的な経営判断であったことを明らかにした。厚生労働省保険局の城克文総務課長、日本医療政策機構の宮田俊男理事との3名で実施した本誌座談会の中で、自身の見解を述べた。


Monthlyミクス9月号(9月1日発行号)、座談会2020年の製薬産業を語るPART1 「新薬開発振興と政策がフリクション いまがギリギリのタイミング 官民で議論を」(記事はこちらから。会員のみ)に詳報。


◎手代木社長「研究開発の効率化が最大の課題」 キュア・メディスンの議論は急務



高額薬剤問題について手代木社長は、世界経済が減速する中で、日本特有の問題ではなく、世界各国で抱える課題だとの認識を示した。創薬型の製薬企業としては、研究開発の効率化が最大の課題だとの認識を示した。パイプラインが生活習慣病からスペシャリティーへとシフトする中で、開発も変化する必要性があると指摘。生活習慣病治療薬などでは、承認を得るために、数万例規模の臨床試験を要するケースもあったが、「一種のパワーゲームのような内容では通用しなくなる」と指摘。「仮免許の状態で承認をいただき、市販後臨床試験などで安全性を積み上げるのであれば、製造企業の開発コストも一定程度まで下がる」と述べ、官民、産官学で対話を深め、より良い承認パッケージを作り上げることが必要との考えを示した。


また、C型肝炎治療薬など、治癒(キュア)が視野に入る疾患では、「これまでの保険償還の枠組みから外した考えも必要ではないか」と指摘。自社でも、多剤耐性菌に対する抗生物質の開発に取り組むが、「何かあったら使えるようにするという医薬品をいまの保険診療の枠組みの中で、どのように償還するかは非常に難しい」と述べ、ワクチンなどのように、国が製品を買い取るような仕組みも考慮すべきとの考えを示した。手代木社長は、「義務感だけで製薬企業に開発を求めるのは難しい。開発のインセンティブをかけながら、妥当なリワード(報酬)と国の安全性とのバランスをどうとるか」考えることが重要との考えを示した。「いまのまま、キュア・メディスンのインセンティブを剥ぎ取られてしまうのであれば、製薬企業は開発をやめてしまう。それは世界にとってロスだ」と強調。「医療、サイエンス、イノベーションの仕組みに、社会がまだついていけていない部分がある。いままさにそれが顕在化している。C型肝炎をきっかけに、今後この問題について真剣に議論することが必要だ」と述べた。


◎厚労省・城総務課長「産業振興と財政政策がフリクションを起こしている」



厚労省の城課長は、「現在の施策の目標は、単なる医療費の抑制ではない。質をしっかり確保した上で、国民皆保険を将来にわたり維持できるようになることだ」と説明。日本の経済成長が繊維産業、白物家電、自動車などが輸出産業として為替政策を背景に成長してきた経緯を語り、「次の輸出産業としてあがる製薬産業は、海外では活躍してほしいが、日本での売上には財政的な抑制圧力がかかってしまっている。産業振興策と財政政策が、社会保障を舞台に初めてフリクションを起こしているということだ」と述べた。その上で、「答えはまだないが、ホームで足腰を強くしなければ、アウエイで勝つことなどできない」との考えを示した。


また、後発医薬品80%目標が示される中で目標達成には「化学合成品で特許が切れたものがほぼ100%後発医薬品に切り替わらなければ達成することができない」との認識を示した。ただ、こうした状況は政策誘導によるものだと述べ、「新薬メーカーが新薬を開発し、特許が切れるからこそ、成立している世界であり、この道は行き止まりだ。ジェネリックメーカーは、後発医薬品80%時代の先のビジョンを持っていないのではないか」と指摘した。


◎日本医療政策機構・宮田理事「産官学の連携推進を 企業もマインド変化を」


産官学の連携の重要性が指摘されるが、日本医療政策機構の宮田理事は、「産官学の連携を早く進め、医療全体のサービスを向上させていくために、製薬企業のマインドを変えていかないといけない」と強調。ベンチャーの育成の重要性も指摘し、「日本では難しさもあるが、誰かがやってくれるのを待っていてはダメで、製薬企業のバックアップの必要だ」との考えも示した。そのほか、バイオシミラーについて「思い切った施策が必要」との考えも示した。
 

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