【World Topics】悪夢
公開日時 2016/07/11 03:50
怖い夢を見てうなされて目覚めた、胸がドキドキし、びっしょり汗をかいていた、というような経験。誰しも1度くらいは思い当たるのではないだろうか。
子ども時代は悪夢が怖い。だが、年をとると、怖いのは悪夢そのものではなく、むしろうなされて動悸が激しくなったことで心臓麻痺を起こすのではないか?という恐怖の方だとニューヨークタイムズ紙は指摘する。
医学界では、悪夢にうなされて心臓麻痺をおこしたという症例はほとんど報告されていない。だが、実際には、そういう研究がほとんどなされていないだけであって、そういう症例がないのかどうか、実はわかっていないのだそうだ。
心臓内科医の友人によれば、悪夢が動悸を激しくさせたのか、動悸が激しくなって苦しくなったために悪夢を見たのか、その因果関係は必ずしも明らかではないだろうと指摘する。
悪夢はREM睡眠時に見やすいことが知られており、したがって多くの場合夜明け近くに観察されることが多い。そしてリスクのある患者さんが睡眠中に心臓麻痺を起こしやすいのも、ちょうど同じ時間帯であることがわかっている。だが、一般の、特にリスク要因のない人の場合には、その危険はほとんどない、と言うのはニューヨークのマウントサイナイ病院の心臓内科医Dr. Mary Ann McLaughlinである。
悪夢は飲酒、睡眠障害、服薬(特に抗鬱剤や血圧降下剤など)で誘発されることがわかっている。不安や抑うつ症状も悪夢を誘発しやすい。また、しばしば眠りが中断される睡眠時無呼吸症の患者も悪夢を見やすいことがわかっており、 睡眠時無呼吸症を治療すると状態は改善されることが実証されている。
また、心疾患のある患者も睡眠時無呼吸症を起こしやすいので、その意味で悪夢に悩まされやすい。
要するに、とニューヨークタイムズ紙のコラムニストがまとめているところによれば、悪夢が 時として生命の危険をもたらす可能性があるということは完全には否定できないが、しかし 悪夢を誘発する要因を避け、悪夢を避けることでそのリスクは大幅に軽減される。(医療ジャーナリスト 西村由美子)