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2016年は医療ICTを活用した地域医療マルチチャネル戦略の本質に注目

公開日時 2015/12/28 00:00

マルチチャネル3.0研究所
主宰 佐藤 正晃

 

2016年は4月の診療報酬改定もあり医療政策の今後の方向性にとっても非常に大切な年になる。地域医療構想も全国で進み始めている。マルチチャネル戦略と地域包括ケア時代における製薬企業の活動を再定義するためスタートした連載の2016年新年号という事もあり、これまでの連載のサマリーと今後のMC3.0時代の抱負などを述べることとする。

 

 

これまでの連載を通じて

 

読書の方からは現在の医療ICTシステムの活用状況に驚く声が何人からも聞かれた、日本の医療のICT化は遅れていると言われていた時代から十年近く過ぎきた、私自身も医療ICT担当者で病院を回っていた時代から現場をインタビューすると医師を始めとする医療従事者の意識が相当変わってきたことがわかる。

 

ひと昔前はインターネットに「電子カルテがつながる事は悪である」「医療データ院外の外部機関に預けることはけしからん」等との意見が大多数であった。この変化は製薬企業にも大いに関係があり、エムスリーの台頭、医療系SNSの普及、MRのiPad活用、Web講演会の普及があっという間に広がってきたのは言うまでもない。

 

一方で製薬のプロモーションで使われるデジタルの遥か上を医療ICT基盤という形で進んでいる。全国5000医療機関を繋ぐID-Linkの仕組みは病名、検査結果、アレルギー、処方歴の共有を地域連携協議会単位で実現する何年も前から始まっている。また、昨年のインタビューの中でも製薬企業のMRは医療機関がどのような医療ICT診療支援システムを使っているのか国策で医療ICTがどのように進んで切るのか等非常に大きい視点での医療の変わり目の動きを知らなすぎるとの声を聴くことも何度かあった。

 

例えば現在内閣官房が主導で次世代医療ICTのプロジェクトが進んでいる。(図1

 

これは2つの目的を有している【医療ICT基盤の構築】アウトカムを含む標準化されたデジタルデータ(以下データ)の収集と利活用を円滑に行う全国規模の仕組みの構築。【次世代医療ICT化推進】臨床におけるICTの徹底的な適用による高度で効率的な次世代医療の実現と国際標準の獲得。この分野での医療ICTの活用は益々進むのは間違いない、オープンな情報はいくつでも存在するので是非とも、製薬業界の読者の方には今後の医療の動向を理解する上で頭に入れる事をお勧めする。

 

今回の連載では何度か医療機関の方に取材を行った、私はその度に最後には製薬会社に今何を期待しているのか?という質問を投げかけている。

 

その中でMRの活動を医師中心から薬剤師に対して変更する必要がるのではと意見が幾つか見られた「これまでのMR活動は対象を医師に絞ってきたことに問題がある。ナレッジを埋めるという点では、保険薬局で在宅医療を支える薬剤師と組むことが求められるのではないか」や「薬剤師はハイリスクな抗がん剤を投与するだけでなく、退院後の副作用まで予測しなければならないとすると、薬剤師への情報提供はこれまで以上に必要となろう」など、今後製薬企業として薬剤師に対して活動の必要性に言及する医師も多かった。スタイルを確立する事は必要なのだが、特に地域医療の中でのマーケティング対象は多方面に渡るので医師、薬剤師、看護師、さらには経営企画室、医療情報室、地域医療連携室等のこれまではMRが行っていない部門へのアクションは必要である。

 

中には「地域医療連携室に頻繁にMRに来てもらっていて、色々教えてもらい大変助かっている」との意見もありMRの意識も変わってきていると実感することもあった。しかし一部の感度の高い担当者だけの活動とするのではなく、組織全体として地域医療で活躍できる活動を始める必要がある。私自身デジタルマーケティングの責任者として前職の製薬会社では活動を行っていた。その際には医師の行動変容に気づかなければいけないというメッセージを社内でも発信していた。顧客の環境変化に対応できない企業が繁栄する事は難しい、さらには医師個人の情報収集の変化だけではなく高齢化に伴う医療費高騰という国家的な課題も浮上している。製薬企業各社が次の一手を探すための手助けとなる活動がMC3.0研究所の活動なのである。

 

 

MC3.0研究所

 

これまで何度かマルチチャネル3.0研究所についての「問い」を関係企業の方から頂く事が多かった。今回はこの場を借りて少し今回は設立の背景含め研究所の説明をしたい(図2、3)。

 

当研究所は大学、医療機関、製薬、IT企業等の医療に携わる有識者で構成される団体で、地域医療における製薬会社等医療産業の社会的価値役割と活動を定義し実践的なソリューション開発を行う事を目的として設立された。

 

活動概要としては2つほどあり、①医療分野における産官学連携を促進し製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者に対するイノベーションの検討と実践を行う②次世代型マルチチャネルソリューションに関する啓発、教育、調査研究及び情報提供を行う研究機関である。既存組織内で学問的成果物の発表にとどまることを良とせず、具体的な活動をするために活動を実践する研究機関である。

 

第一回目の研究会では「最新の電子カルテの機能とデモ実演」(写真)という最新医療ICTの同行の議論やパフォーマンスで能力が測れるか?~動機のマネジメントと活きた現場のKPIの発見~」といったテーマで本当の評価手法は何かといった、現在売上並びにSOVの数をベースとしたMRの評価方法に対し別の側面で議論が出来る活きた現場のKPIの志向プロセスに関しての議論を行った。

 

3.0の名前には製薬企業が今後実践すべきマーケティングの方向性を込めている。製品価値主導、消費者主導のマーケティング1.0、2.0に対し医療に対する製薬企業の価値主導のマーケティングを追及する意味合いと我々の方向性を示すという意味で3.0という名前を冠している。患者を中心としたマーケティングが行うために必要な情報はオープンデータを活用する事である。

 

現在DPC病院のデータはかなりオープンになっているそのデータを活用する事で地域毎の疾患の数や患者数なども見ることが出来る。疾患患者を地域軸で見ることが出来れば、MRの適切なリソースアロケーションも実施することが出来る。また将来にわたる人口増減でと組みわせる事で人員の配置等の調整も可能になる。今後MR諸君もデータ分析を活用したディテール活動を行う事は必須になるであろう。医療ICTおよび医療データに関するリテラシーが高く、医療データから課題発見および解決提案ができる能力を身に着けるための医療ICTトレーニング等も必要になってくると考えている。

 

今後の活動予定としては、定期的な研究会の開催に留まらず更なる外部発信の場を持ちたいと考えている。MC3.0の活動として地域医療における医療ICT活用するための実践モデルの研究や実際にシステムを稼働させる事も実現したい。

 

 

地域連携における
マルチチャネル戦略の本質

 

さて、本連載の第一回目は「地域包括ケア時代の新マルチチャネル戦略考」というテーマでスタートした。地域医療構想をベースに進められる地域包括ケアの推進において効果的なメッセージアウト実現する為には、「製品」と「医師」という2軸のみに注力した活動では効果を発揮しない。これまで製薬企業が効果指標としているマーケティングデータはSOVを測定するための設計で作られている為、現時点では地域軸で活動した場合の効果測定存在していないのは事実であるが、現場に立っているMR自身や所長等の管理職の方々は肌感覚で過去の成功パターンとは明らかに違った成功モデル必要とされている事を感じているのはいうまでもない。

 

待ったなしの高齢化に伴い国は医療費を抑えることに力をいれ、ジェネリック医薬品の浸透率の目標80%という外部環境からの圧力に加え、新薬の上市する確率は約3万分の1と新薬開発費も数千億円と言われ日本の製薬企業が生き残る道は今後益々困難な道であるのは誰の目にも明らかである。

 

特にここ数年入社したMRの方は訪問規制強化や接待規制後という事もあり、先輩達の成功体験は過去のバブル期時代とバブル崩壊後の学生にも似た隔世の感を感じている事と思う。製薬企業のMRは一般的には昔ながらの営業職と言われているが、私は製薬企業勤務時代にはその様には捉えていなかった、マーケティングの基本は最低でも知らなければならないし、併せて「デジタルを駆使した販促活動する医療サービスプロバイダー」でなければならないと思っている。マーケティングのステップは非常に簡単に言うと「分析」「戦略」「実行」の繰り返しである。ここを説明するのはこの回は省略するが与えられた目標を「実行」するのではなく常に何故必要なのかその根拠となるデータはあるのかを考える「癖」を持つことは自分の行動に深みを持つことが出来自信も産れ結果、良いディテールのスパイラルを回すことが出来る。

 

本社から与えられた、ターゲティングや目標値に対してはなぜそのような方向になるのかを考え、担当地域で正しいSTP「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング」なのかを議論する事は必要であり、かつ地域毎の医療施策を本社部門にだけ求めるのではなく、現在地域医療構想を議論している自治体の協議会にも積極的に顔を出し知識の習得に励む必要がある。

 

実際に介護施設に伺う事は現実的に簡単ではないかもしれないが、例えば地域の病院グループでは介護施設を有している組織も少なくない、医師との面談の中で介護施設との連携の取り組みや今後の方向性を議論できるようになると、医師からも一目置かれる存在になる事ができる。MRとして差別化は何なのか製品軸と個人の知識軸のハイブリット戦略で様々なステークホルダーから頼りにされるMRになる事でこの医療改革大航海時代を乗り切るのである。

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤正晃(一般社団法人医療産業イノベーション機構 主任研究員)

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