日本リウマチ学会 経口抗リウマチ薬ゼルヤンツの適正使用でGL作成 適応患者を明確化
公開日時 2013/06/07 05:02
日本リウマチ学会はこのほど、ファイザーが発売予定の初の経口抗リウマチ薬ゼルヤンツ錠(成分名:トファシチニブクエン酸塩)について、適正使用を促すため、「全例市販後調査のためのトファシチニブ使用ガイドライン」を学会ホームページで公表した。ゼルヤンツは3月に「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能効果で承認されたが、同学会は治験で示された安全性リスクを鑑み、適応と、有害事象の予防・早期発見・治療のための注意点をガイドラインで示している。
ゼルヤンツの添付文書では、効能効果に関連する使用上の注意として「過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与する」とされているが、学会のガイドラインでは投与対象を「メトトレキサート8mg/週を超える用量を3カ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者」と詳細に示し、日和見感染を避けるために対象患者における末梢白血球数などの条件も設けた。
有害事象の予防・早期発見・治療の対策はフローチャートにまとめ、発熱や咳、呼吸困難が出現した場合は肺病変を想定して投薬を一旦中止することとした。その際に、胸部X線などの画像所見を呼吸器内科医または放射線専門医の読影を受けることが明記されている。
また、治験で示された発がんリスクへの対応策として、添付文書の禁忌患者の項に記載がない「悪性腫瘍を有する患者」への投与を禁忌としたほか、注意事項として「悪性腫瘍の既往歴や治療歴を有する患者、前がん病変(食道、子宮頸部、大腸など)を有する患者への投与は避けることが望ましい」を挙げた。
なお、ゼルヤンツは、米国で2012年11月に、日本で13年3月に承認を受けたが、欧州では4月の専門委員会で承認に否定的な見解が表明されている。日本リウマチ学会は3月の国内承認後にゼルヤンツの安全性に懸念を表明する文書を作成しており、ファイザーは使用施設・医師を限定することなどを回答していた。承認条件として全例調査が義務付けられており、ファイザーは4000例の市販後臨床試験調査を計画している。同学会はこの市販後調査の結果で「実地臨床における適正使用のためのガイドライン」を新たに策定する予定にしている。