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【ISC2013事後リポート】血管内治療で求められる日本人症例の集積と患者像の明確化

公開日時 2013/03/19 05:00

 

rt-PA承認から7年 見えた課題

 

日本国内でアルテプラーゼ(rt-PA)が承認されて7年あまりが経過した。この間、t-PAをめぐってはECASS-Ⅲが報告され、t-PA静注 療法を4.5時間以内に施行することで、臨床転帰を改善することが示された。この結果を受け、国内でも、2012年8月に、3時間から4.5時間まで time window(治療可能時間)が延長された。一度脳卒中を発症すると、寝たきりなど機能予後の悪化が懸念される中にあって、治療可能な患者が増えることは 臨床現場でも大きな福音として受け入れられた。
一方で、症例が集積される中にあって、t-PAの課題も浮き彫りになってきた。現在のところ、発症から3時間以内の超急性期脳血管障害の治療選択肢は、t-PAが柱となっているにもかかわらず、日本国内での投与は対象患者の約5%にとどまっている。
この背景には、t-PA静注療法に厳格な適応基準が設けられていることがある。t-PAは高い効果をあげることが期待できる一方で、適応基準から逸脱した 症例では、症候性頭蓋内出血や死亡など出血リスクが増加する懸念もあるためだ。2012年に日本脳卒中学会がまとめた、「rt-PA静注療法適正治療指針 第2版」では、発症時刻や既往歴、血圧や血小板数、CT/MRIでの広汎な早期虚血性変化などから禁忌が定められており、1項目であっても適応外であれば 実施しないこととされている。加えて、年齢や神経症状などから慎重投与に該当すれば、適応の可否を慎重に検討することとされている。投与を行うことができ る施設基準もCT または MRI 検査が 24 時間実施可能で、集中治療のために十分な人員(日本脳卒中学会専門医などを中心とする診療チーム)及び設備(ストロークケアユニットまたはそれに準ずる設 備)を有し、脳神経外科的処置が迅速に行える体制が整備されている施設で、アルテプラーゼ静注療法を行うこと(エビデンスレベル: Ia, 推奨グレード :A)が求められており、実施可能な施設も限られるのが現状だ。



t-PAの非適応、無効例の患者も多く存在 実臨床からの課題


実臨床での投与症例が増える中で、効果を示さない症例があることも分かってきた。「重症例や主幹動脈では効果が低く、無効例も存在する」と岐阜大学大学院 医学研究科神経統御学講座脳神経外科学分野准教授・臨床教授の吉村紳一氏は指摘する。このような中で救済治療として、注目を集めてきたのが血管内治療だ。 血管内治療には大きく分けて、ウロキナーゼ動注など局所線溶療法、血管形成術やステント留置術、機械的血栓回収療法(Merci Retriever、Penumbra System)がある。
日本では、発症6時間以内の局所線溶療法はMELT Japanの結果から、「中大脳動脈閉塞症の転帰が改善する」とされている(エビデンスレベル:Ⅰa,推奨グレード:B)。
一方で、 発症後8時間以内の機械的再開通療法については、「アルテプラーゼ静注療法の非適応および無効例に限って承認されたが、その有効性・安全性は未だに検証中であることに留意する(エビデンスレベル:Ⅱa, 推奨グレード:C1)」とされている。
しかし、t-PAの非適応、無効症例が実際には多いのが実臨床の姿と言える。吉村氏も、「血管内治療を施行された患者さんの中には、t-PA無効例の患者 さんが多く含まれていた」と指摘する。このような患者の急性治療として、血管内治療の有効性・安全性確立に期待がかかる。
ISC2013で報告された「SYNTHESIS Expansion」、「IMS-Ⅲ」、「MR RESCUE」の3試験ではいずれも、血管内治療の優越性を明確に示すには至らなかった。臨床試験の結果からは、治療開始時間の遅れや、画像診断による適 切な症例の選定など、現時点での課題を逆につけられたと言える。
まずは、さらなる搬送体制の整備も治療成績向上には欠かせない。実臨床での応用にはまだ一歩あるが、画像診断の精度向上も求められる。また、t-PA以上 に施行できる施設が限られることに加え、医療費への懸念も残される血管内治療では、より慎重に適応を見極めていくことも必要と言えるだろう。実臨床には臨 床試験では十分解決できない課題も残るが、手技を行う明確な患者像を浮き彫りにすることこそが、臨床試験に求められていると言える。日本人は、出血リスク が高く、t-PAの承認用量も異なる。海外で行われた大規模臨床試験の結果をそのまま外挿することも難しいといえる。
今後は、実臨床での症例集積とともに、日本人を対象とした臨床試験の実施により、血管内治療の対象となる患者像を明確に示すことも求められることとなりそうだ。    (望月英梨)

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