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【JCS2012特集】ARISTOTLE日本人サブ解析  ワルファリンに比べ出血頻度、全死亡少なく 

公開日時 2012/03/19 14:02

 

後藤信哉氏日本人心房細動患者における、第Xa因子阻害薬・アピキサバンの投与は、ワルファリンに比べ、脳卒中、全身性塞栓症の発症を抑制したほか、出血頻度や全死亡も少なく、グローバル試験全体と一貫した傾向を示すことが分かった。同剤の国際共同臨床第3相試験「ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)」の日本人サブ解析結果から分かった。3月16~18日まで福岡県福岡市の国際会議場などで開催された第76回日本循環器学会学術集会で、東海大学医学部内科学循環器内科教授の後藤信哉氏が報告した。


ARISTOTLEは、日本を含む39カ国1034施設で、1万8201例の心房細動患者を対象に、アピキサバンのワルファリンへの有効性・安全性の非劣性を示す目的で、無作為化二重盲検下ダブルダミー比較試験として実施された。1つ以上の脳卒中危険因子を有する心房細動患者を、①アピキサバン5mg1日2回群(選択された患者では2.5mg)②ワルファリン群(目標INR:2.0~3.0)――の2群にランダムに割り付け、治療効果を比較した。主要評価項目は、脳卒中+全身性塞栓症。

すでに報告された本解析では、アピキサバンの投与により、主要評価項目の発生をワルファリン群に比べ、有意に21%抑制し、非劣性だけでなくワルファリンへの優越性を示している。また、出血イベントの発生率や死亡率が有意に少ないことも分かっている。なお、平均INR至適範囲内時間(TTR)は66.0%、薬剤の中止率はアピキサバン群で25.3%、ワルファリン群で27.5%だった。平均追跡期間は1.8年間。

◎主要評価項目 脳卒中+全身性塞栓症の発生率 アピキサバンが大幅に下回る

今回報告された解析は、日本人336例(アピキサバン群:161例、ワルファリン群:175例)を対象に実施された。平均年齢はアピキサバン群71歳、ワルファリン群70歳。75歳以上の高齢者は、アピキサバン群で33%、ワルファリン群で34%だった。
CHADS2スコアは両群ともに平均2点で、グローバル全体の試験結果と比べ、1点(アピキサバン群:42%、ワルファリン群:40% vsアピキサバン群:34%、ワルファリン群:34%)が多い傾向がみられた。そのほか、腎機能低下例が多い傾向がみられた。薬剤の中止率は、アピキサバン群で18.0%、ワルファリン群で30.3%だった。なお、TTRは67.0%、追跡期間は2.1年間だった。同意取り消しや追跡不能例はなかった。

その結果、主要評価項目(脳卒中+全身性塞栓症)の発生率は、アピキサバン群で0.87%/年、ワルファリン群で1.67%/年に比べ、大きく下回る結果となった。

内訳をみると、虚血性+原因不明の脳卒中はアピキサバン群で0.87%/年、ワルファリン群で1.11%/年、出血性脳卒中はアピキサバン群では0%/年、ワルファリン群で0.55%/年だった。

全死亡は、アピキサバン群で1.74%/年、ワルファリン群で3.02%/年で、全ての項目でワルファリン群を下回る結果となった。そのほか、心筋梗塞の発生は、ワルファリン群で0.28%/年に対し、アピキサバン群ではみられなかった。

一方、安全性については、安全性の主要評価項目であるISTH基準による大出血は、アピキサバン群(160例)で1.28%/年、ワルファリン群(175例)で5.99%/年で、アピキサバン群で大きく下回る結果となった。GUSTO基準、TIMI基準を用いても同様の傾向を示した。

そのほか、頭蓋内出血はアピキサバン群で報告されず、ワルファリン群で1.97%/年だった。消化管出血は、アピキサバン群で0.63%/年、ワルファリン群で1.97%/年、大出血+臨床上重大な微小出血はアピキサバン群で1.90%/年、ワルファリン群で7.86%/年で、いずれもアピキサバン群で少ない結果となった。

すべての出血は、アピキサバン群で20.95%/年(51例)に対し、ワルファリン群は40.13%/年(82例)で、ハザード比は0.60[95%CI:0.42-0.85]で、アピキサバン群で大きく減少していた。後藤氏は、同リスクのKaplean-Meierカーブを示しながら、「ワルファリン群は、使い始めた最初にall bleeding(出血)が起こり、後半は緩やかになる。アピキサバンは、一番最初は多いものの、最初から緩やかなカーブを描く」と説明した。

有害事象は、アピキサバン群で96.3%(154例)、ワルファリン群で34.3%(60例)。重篤な有害事象はアピキサバン群で31.9%(51例)、ワルファリン群で34.3%(60例)だった。そのほか、ワルファリン群の2群間で差がみられず、肝機能値の上昇なども報告されなかった。

後藤氏は、ARISTOTLEの試験全体について、「心房細動患者において、アピキサバンは脳卒中と全身性塞栓症の予防において、ワルファリンに対して優越性を示し、出血頻度も少なかったことから、死亡率を低下させた」と説明。「数としては日本の患者さんは336例で、経験値としてはとても少ない」と断った上で、「統計解析をしていないが、数値的にみると、グローバル試験の結果と同じような雰囲気だった」と結論付けた。

◎「副作用少なく、効果がある理想的な薬」コメンテーターの小川氏

コメンテーターとして登壇した熊本大学大学院循環器病態学(国立循環器病研究センター病院)の小川久雄氏は、「結果を見て驚いた。ワルファリンに比べ、副作用が少なく効果があり、まさに理想的な薬」と試験を評価した。

また、急性冠症候群(ACS)患者を対象にして、同剤の有効性を検討した「APPRAISE-2」は出血リスクが高まったことなどから早期中止がなされたが、「低用量にして、もう一度やってみる価値があるのではないか」との見解も示した。
 

 

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