杏林製薬トップ人事 次期社長に宮下常務が内定 開発や信頼性保証に強み
公開日時 2012/05/10 04:02
キョーリン製薬ホールディングスは5月9日、杏林製薬の次期代表取締役社長に宮下三朝(みつとも)・常務取締役が就任するトップ人事を内定したと発表した。6月22日開催予定の株主総会で正式決定する。現社長の平井敬二氏は取締役相談役に内定した。
同社はこの数年間、呼吸器内科や耳鼻科といった特定領域の開発パイプラインの強化に取り組み、創薬研究の経験豊富な平井社長を中心に開発候補品を複数導入した。同社は、これら領域のパイプラインの構築に一定のめどが立ったと判断、開発候補品の臨床開発、申請手続き・承認取得、上市を遅滞なく成功させるため、開発、信頼性保証、生産などを歴任した宮下常務を経営トップに据えることにした。
宮下常務は長野県出身の61歳。1974年4月に杏林製薬に入社。品質保証部長や信頼性保証室副室長などを歴任し、2008年4月に生産本部長(現任)、11年6月に常務取締役(現任)に就いた。信州大工学部(合成化学専攻)卒。
なお、耳鼻科領域や呼吸器領域の開発パイプラインには、気管支喘息治療薬KRP-108(12年度中に申請予定)、耳鳴りの治療薬KRP-209(P2)、COPD治療薬KRP-AB1102(P2)――がある。また、同社がこの日に発表した2012年3月期(11年度)決算の中で、COPD治療用配合薬KRP-AB1102Fも開発準備段階にあることを明らかにした。
◎主要製品キプレス、ムコダイン、ウリトスの11年度売上 堅調に推移
キョーリン製薬ホールディングスの11年度連結業績は、東日本大震災に伴う在庫不足を考慮した前倒し発注によって11年3月末に流通在庫が増加した影響などにより、11年度は売上高1032億3200万円(前年同期比0.8%減)、営業利益144億6400万円(12.0%減)と減収減益だった。国内ビジネスでは、気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療薬キプレス、過活動膀胱治療薬ウリトス、気道粘液調整・粘膜正常化剤ムコダインの売上は前年実績を上回ったが、潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬ペンタサは前年を下回った。
ジェネリックの売上は86億5600万円(2.4%減)。保険調剤薬局への売上は増加したものの、他社からの受託生産品売上の減少、震災の被災地域にある販社の売上減などが影響した。
12年度業績見通しでは、12年4月の薬価改定によって同社は6%台のマイナス影響を受けたが、キプレスやウリトスの伸長、ジェネリックの売上拡大を見込んで増収増益との計画をたてた。なお、営業利益目標の179億円(23.8%増)を達成すると、同社にとって過去最高益となる。これまでは10年度の営業利益164億円が最も高かった。
【連結業績(前年同期比)12年度通期予想(前年同期比)】
売上高1032億3200万円(0.8%減)1047億円(1.4%増)
営業利益144億6400万円(12.0%減)179億円(23.8%増)
経常利益152億7500万円(10.7% 減)185億円(21.1%増)
純利益92億3100万円(15.5%減)118億円(27.8%増)
【11年度売上高(10年度実績)12年度通期予想、億円】
キプレス368(345)379
ムコダイン215(213)213
ペンタサ180(194)170
ウリトス(自社販売)63(55)76
ケタス34(40)30