沢井製薬 キョーリンに経営統合を正式提案 「キョーリンが存続会社でも良い」
公開日時 2010/12/03 04:01
沢井製薬は12月2日、同日開催の取締役会でキョーリン製薬ホールディングスに経営統合提案することを決議するとともに、提案書をキョーリン側に同日手渡したと発表した。沢井は今夏に、キョーリンに経営統合を水面下で打診したが、キョーリンが企業価値向上の観点からお断りしている経緯がある。沢井は今回、今夏に打診した内容をベースに経営統合提案書を策定し、機関決定した上で更にその内容を公開してキョーリン側の全てのステークホルダーに訴える戦略に出たが、キョーリン側が応じるかは難しい情勢にある。なお、この提案の有効期限は2011年2月末まで。
沢井の澤井光郎社長は同日、東京都内のホテルで会見し、統合提案の中身やねらいを説明した。保健医療水準の向上に不可欠な新薬と、高成長ビジネスの後発品を融合させた「ハイブリッド・ビジネスモデル」の構築がねらいとし、スペシャリティ領域に強みを持つキョーリンと品揃え豊富な沢井が統合することで、例えばキョーリンが得意とする呼吸器領域の医療ニーズを新薬と後発品で相互補完的に、より満たせると説明した。キョーリンを統合相手に選んだ理由では、▽類稀なる新薬開発力▽ジェネリック事業に早期参入を果たした先見性▽柔軟な経営風土――などが魅力的に映ったと話した。
対等の精神による経営統合を前提とし、統合後の新会社は最終的には持株会社方式を目指すが、キョーリンを存続会社とする提携方式も検討したいと説明した。澤井社長によると、キョーリンを存続会社にすることも検討するとした部分が、キョーリンに今夏に打診した内容より一歩踏み込んだところという。「杏林」との名称を統合後に継続使用することも提案した。
また、経営統合が実現した場合、2014年3月期で売上高が約2320億円、営業利益が約410億円の製薬企業が誕生するとし、統合による相乗効果は売上高で約250億円、営業利益で約70億円にのぼるとした。更に、キョーリンの1株当たりの価値を1400円~1600円と試算しているが、統合すれば1600円~2000円に上がるとも説明した。今夏の打診でここまで明確な数値を示したかは不明だが、何らかの数値は示したとされる。
◎我々の考えを世間様に問いたい
澤井社長は会見で、「(今夏の打診に対して)キョーリンから前向きな回答は得られていない。その後も当社はキョーリンに協議を求めてきたが、現時点で詳細な検討を経た回答はなく、経営統合に向けた前向きな協議に至っていない」と話した。ある沢井の関係者からは、「水面下で協議していてもなかなか進展しなかった。統合提案を機関決定して公開し、我々の考えを世間様に問いたい」との声も聞かれた。
一方、キョーリンは同日、「真摯に検討の上、提案に関する当社の対応について、決定次第速やかに公表する予定」とのコメントを発表した。ただ、キョーリン株の約4割を保有する創業家一族が難色を示しているとされるほか、キョーリンの山下正弘社長も11月10日の投資家向け中間決算説明会で、「企業価値向上の観点から、提案に賛同しかねる」などと表明(11月11日既報)しており、今夏の打診から踏み込んだ“キョーリンが存続会社”との部分だけで方針転換するとは考えづらいとの見方がある。
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